言葉②「不安になったら『澤穂希はできる!』と自分に言い聞かせて行動に移す」
Q:澤さんは「夢をかなえる。」という著書も出されていますが、夢や目標を設定したり、そこに向けて挑戦する時に心がけていることはありますか? 何かをやる時って、すごく悩むし、不安だなという方が大きくなっちゃうから迷うんですけど、自分の性格的に、やらないよりやって後悔した方がいいですし、悩んでるって事はやりたいってことじゃないですか。
ちょっとでも悩んでやりたいなと思ったら、それが失敗しようがしないかは別として、「やる!」っていうのが自分の中でのこだわりというか。
Q:行き詰った時には、どのような行動でそこを乗り越えていくのですか? サッカーのことで言うなら、少しでも不安になったり次のステップに向けて悩んだりしたら、「澤穂希はできる!」って言って試合に臨んだり、行動に移すんです。そうすると、本当にできるんですよ。
Q:20歳でアメリカのチームに移籍し、5年間プレーされましたが、当時は珍しかった海外移籍を決めた裏にも、明確な目標があったのですか? 16歳の時に初めてのW杯を経験しました。ちょっとやっても吹っ飛ばされるし、結果も大差で負けて、本当に自分が何もできないことを実感しました。
自分の弱さとか、日本の弱さに気付いて、これは自分磨きで海外に行った方がいいなと、10代の終わりぐらいに決めて、20歳で行きました。
Q:澤さん自身が、先頭に立って日本代表を強くしたいという気持ちに切り替わった瞬間はあったのですか? 20歳の時に、日本代表で私は副キャプテンだったんですが、たまたまキャプテンが試合に出られなかった時にキャプテンを任されたことがあって、その時に「やらなきゃいけない」っていう責任感をすごく感じました。
海外に行く選手もちょっとずつ増えたりして、みんな、日本とのギャップを感じて、少しずつ精神的にも変わっていったのかなと思います。
Q:そういった流れが、優勝した2011年のW杯につながります。あのチームの強さとは何だったのでしょうか? 佐々木監督がいて、チームコンセプトがあって、自分たちがやりたいサッカーがあって、課題や問題をそのままにしないようにしていました。
何かあった時には、すぐみんなで話し合って解決するっていうのが強かったと思いますね。家族より一緒にいる時間が長かったですし、練習中も終わってからも、何か違うなと思ったら言う。
Q:執念や固い結束を感じるチームだったと思うのですが、佐々木監督の影響も大きかったですか? 選手の話もちゃんと聞いてくれると言うのが大きかったと思います。すごく受け入れてくれたので、選手側からも、言いにくいことを伝えられましたね。
Q:リーダーの言動で組織が変わると? 2008年の北京オリンピックの時に、佐々木監督が「世界のベスト4」という目標を掲げたら、本当にベスト4になったんです。その時に、「世界一って言ってたら、もっと目標が大きく変わって、みんなのモチベーションも変わったんじゃないか」って。
それで、2010年のアジア大会の時に監督が「世界一を目指そう」って言ってから、みんなの気持ちがそこに向かったのだと思います。
Q:佐々木監督を中心に、全員が目標を共有できていたことが、11年のW杯につながったということですね。 普通にアメリカと日本が戦ったら、どう考えてもアメリカの方が身体能力とかも高いし、スピードも、パワーも全部アメリカが勝っている。
でも私たちが勝ったのって、本当に最後まで諦めない気持ちだったり、ひたむきにプレーするっていうところが強みだったから、最後まで諦めなければ何があるかわからないというか。
Q:「アメリカを倒して世界一」という長く追いかけ続けた目標を、W杯決勝という最高の舞台で達成された時の気持ちはいかがでしたか? 夢の中にいる感じでした。ドーピング検査やチームの打ち上げがあったり、荷物整理をしたりとかして、寝る時間が30分しかなくって、ようやく寝ようと思ったら、メダルがそこにあったんです。
それで、これは夢じゃないって、やっと現実なんだっていうのが実感できたというか。その瞬間まではずっと夢の世界にいる感じでした。
Q:澤さんのように「昨日の自分を超え続ける」ためのアドバイスがあればお願いします。 目標って人それぞれ違うし、自分のできることも違うから、それが大きいとか小さいとかは関係なくて、目標を持つことが大切だなっていうのはすごく感じます。
自分が努力することがあって、達成されるし、努力しなければ達成されない。でも、目標とか夢があると、自分が輝いていられるというか。目標がない1日より、目標がある1日がいいなっていうのをずっと感じてやってきたので。
Q:ありがとうございます。最後に、澤さんの次なる目標をお聞かせください。 おばあちゃんになりたいです。自分の母親を見てて、孫との関係がめちゃくちゃよくて。自分の産んだ子供の子供を見たいっていうのが、私の今の大きな夢ですね(笑)。