唯一無二のカブに、世界のマニアが湧く
再びバイクに熱くなるきっかけは、10年ほど前にふと訪れた。
「レンジローバーに乗っているんですけど、近所にタバコを買いに行くのに、わざわざ大きな車のキーを回すのは過剰と言いますか、バカバカしいなとふと感じて。思い立って某オークションサイトで中古バイクをのぞいてみたんです」。
中古車価格は意外と高かったが、「どうせバラして乗るからな」と、そのままでは走らないカブのフレームをポチリ。4000円だった。
眺めていると、かつてそのデザインが好みで跨っていた「ホンダ・TL125」のことが脳裏をよぎったそうだ。
当初はバッテリー点火式エンジンを搭載していたため、走行中に触らぬようカバー付きのミサイルスイッチ仕様に。
仕事柄、寸法に対する見当はいいほう。そのTL125のステムやスイングアームが「ピタリときそうだ」と閃いた。
「見事にハマりましたね。フロント一式はポン付け、スイングームもピボット部をサンダーで削っただけ(笑)。
思わぬ“シンデレラフィット”で出来上がった車体を見ると、もう『TL125のようにトライアラーにしてくれ』と、バイクから語りかけられているとしか思えなくて」。
トライアルとは、未舗装の山道や急斜面、岩などの障害物を越えていく過酷なレース競技。
かくして世界に一台だけのカブが誕生した。
やがて、英国の専門誌などにも掲載され、欧米のカブマニアから「カスタムレシピを教えろ」などとメッセージが殺到するまでに。あまりにも質問が届くので、
インスタグラムで解説を投稿することにしたんだとか。
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