小野令夫(おのれいお)さん●1964年生まれ。インテリアデザイナー。サザビーの家具事業部を経て、現在はアパレル関係の商業施設や、個人宅などの設計・デザインを手掛ける。所ジョージさんの世田谷ベースも小野さんの仕事とか。
連載:Motorcycle Update▶︎バイクのある人生は素敵だ。お気に入りの一台に跨って、家を出るワクワク感。時を忘れてカスタムに興じる悦び。バイクを楽しむ大人たちをピックアップ!
小野令夫さんのカブはたぶん、世界で最も知られている一台だ。
……えっ、これがカブ?
確かに、普通の人がちょっと見ただけでは、カブだとは思わないだろう。1950~60年代の、欧米の工業製品のような鈍いスカイブルーが渋すぎるこのカブは、小野さんがバイクトライアル競技用にカスタムしたワンオフのトライアラーなのだ。
5歳のときからトミカをペンチで改造していた
「小さい頃からモノを作ったり、改造したりするのが好きでした。
ダイキャスト製のミニカーをペンチで切ってオープンカー仕様にしては『オレって天才』って(笑)。そんな幼稚園児でしたね」。
19歳のとき、仲間の厚意で原付バイクを譲ってもらうことになった。これが小野さんにとって最初のカブだ。
「1980年代当時のスーパーカブは、配達や出前など使われる、いわゆる“働くバイク”。当時の僕にはオッサンが乗ってるバイクという先入観がありましたが、乗ってみたらコレが意外と楽しかった。クリームカラーに全塗装したりして楽しんでましたね」。
初めてのバイク、初めてのカブ。良く走るので気に入っていたが、汚れたグリーンの車体が気に入らず、バラしてオールペイントしていた。
カブと言えばアジアを中心に世界でいちばん売れたバイク。何しろオカモチ片手に日本の街中を縫っても安定して走り回れるのだ。完成度はそりゃ高い。
「以来、歳とともに大型バイクにシフトしながら、いろいろと乗り継いできました。でも、30代までは仕事がとにかく忙しかったので、自分でビルドするまでの熱も、時間もありませんでした」。
本職はインテリアデザイナー。パシフィック・ファニチャー・サービスというインテリアの会社を立ち上げたり、住宅や店舗のデザインや設計を手掛けたりと多岐に渡る。
ちなみに、三谷幸喜監督の映画『みんなのいえ』に出てくるインテリアデザイナーのモデルが小野さんだ。小野さんが三谷監督の自邸を手掛けたときのエピソードが元になっているそう。
燃料タンクも、自作のFRP製。キャップはTL125からの移植。ガソリン残量窓はドゥカティのイモラタンクからアイデアを借用。
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