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そして、運動によって、腸内の善玉菌の割合が増え、腸内細菌の多様性(種類)を増大させる、ということもわかってきた。

運動が腸内の善玉菌である乳酸菌の数を増加させる。乳酸は腸内を酸性環境に保ち、病原菌を排除し腸粘膜の免疫機能を維持するうえで重要な物質。さらに運動によって数が増える別の菌がこの乳酸を餌にして短鎖脂肪酸を合成する。

習慣的に運動を行っている人は運動を行っていない人と比べて明らかに「腸内細菌の多様性が高い」ことも報告されている。「腸内細菌が多様であること」が、免疫力を高め病気にならないために重要であることがわかっている。

運動不足の人の代表は、座っている時間が長い人だ。仕事で1日中デスクワークをしている人は、その行為自体が寿命を縮めていると認識しなくてはいけない。座位時間が延びれば延びるほど、全死亡および心臓病による死亡に関連があることが報告されている。座位時間が最大の場合、死亡のリスクは1.54倍だった。

その要因は、筋肉の血流が低下することだ。筋肉はわずかながらの動きがあれば代謝が低下することはない。しかし座った状態では筋肉の活動、とくに下肢の筋肉の活動は完全に停止している。筋肉内の血管の刺激がなくなり、血管の細胞で作られる一酸化窒素合成酵素が低下する。この結果、慢性炎症を引き起こしてさまざまな疾患の誘因になることが想定される。

健康寿命を左右する「最大酸素摂取量」

最大酸素摂取量は、運動中に体内に取り込むことができる酸素の最大量で、全身持久力の指標になる。動いているうちに酸素をたくさん取り込むことができれば、細胞内のミトコンドリアでたくさんのエネルギーを作ることができる。

イギリスの研究で40~69歳(平均58.1歳)の被験者に自転車をこいでもらい、その運動レベルによって経過観察を行ったところ、運動可能レベルが低くなるにつれて生存率が低下した。

最大酸素摂取量の年齢による低下もまた生存率に関連がある。フィンランドの研究で42~60歳の男性の値を測定し、11年後の値と比較した。その結果、最大酸素摂取量の値が大きく下がった人は死亡リスクが高く、逆に改善している人は死亡リスクが低下していた。

運動に取り組むと、最大酸素摂取量の低下を食い止めることができる。運動に取り組まずに値が低下していくと、年を追うごとに死亡リスクは上がっていくが、逆に積極的に運動に取り組むと死亡リスクは低下し最小限に食い止めることができる。


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