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身近にもっとアートを。伝統工芸の美と匠の技が宿った腕時計3選
見るからに伝統工芸的なアートから、言われて初めてわかる繊細なクラフトまで、時計に見られる技巧は、多岐にわたっている。美術館、博物館級の芸術品を腕元に宿せるのが、こうしたアートピース。値段を見て驚いたなら、理由にも納得できるはず。
GRAND SEIKO
グランドセイコー/エレガンスコレクション
スプリングドライブ 20周年記念モデル
美しい雪渓の光景を滑らかな針の動きに重ねて
スプリングドライブ20周年の記念モデルは、薄型かつ84時間駆動の手巻きスプリングドライブを搭載し、文字盤からケースまでを“雪白”の模様で覆う。この技法は1971年に発表した「56GS」で採用され、信州の雪渓をイメージする。風紋が刻む粗い雪氷を思わせるとともに、静かで滑らかな針の動きとも呼応する。
荒々しさと繊細さを併せ持つ雪氷を表現プラチナケースをザラツ研磨で歪みなく磨き上げたあと、精細な模様をリューターを用い、手作業で刻んでいく。アトランダムに見えて、実はデザインスケッチに基づき、理想の模様を表現する。ざらついた表面からは手仕事の温もりが伝わってくる。
PATEK PHILIPPE
パテック フィリップ/ワールドタイム 5231
伝統の工芸美が宿るワールドタイマー
世界主要24都市の時間帯を把握できるワールドタイマーは、機能もさることながら工芸的な美しさも魅力。文字盤の中央には、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸をクロワゾネ七宝装飾で描く。2019年の新作はラグが繊細なウイングレットになり、ベゼルも細くスムースなスタイルになった。針が指し示すのは12時位置にある都市のタイムゾーンで、10時位置のボタンで都市を変更できる。
より精細に、濃淡の深みある色彩を表現北極から見た地球の姿をクロワゾネ七宝装飾で表現する。これは有線七宝とも呼ばれ、描くモチーフに従ってまず文字盤に金線を張り、その間に釉薬を流し込んだあと、高温で焼成する。この工程を何層にも重ね、美しい彩色が出来上がる。
CAMPANOLA
カンパノラ/NZ0000-15F 千夜燈
宇宙に浮かぶ地球に燈る、人々の営みの灯を漆螺鈿で表現
「時を愉しむ、日常を愉しむ、個性を愉しむ」をテーマに、先進技術と伝統の装飾技法を融合させるカンパノラ。このモデルはラ・ジュー・ペレ社の機械式ムーブメントを搭載し、文字盤は“千夜燈(ちよのとぼし)”と名づけられる。宇宙から眺めた、灯の燈る地球の姿を日本の伝統的な装飾技法と匠の技で表現した1本だ。
会津塗の伝統の漆技法が文字盤に息づく“千夜燈(ちよのとぼし)”の文字盤は、漆塗りによる漆黒の背景に、金箔や金粉で夜景を描き、そこに螺鈿を加える。手掛けるのは、会津塗の伝統工芸士、儀同哲夫氏。歴史ある漆塗りの工芸技法を余すことなく時計に注ぎ、現代へと継承する。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。SS=ステンレススチール、K18=18金、YG=イエローゴールド、Pt=プラチナ
柴田 充、髙村将司、渋谷康人、水藤大輔、中村英俊=文