このご時世、時計を着けない理由に、時間に束縛されている気がするから、という人もいるだろう。
気持ちはわかる。そもそも秒の刻みがなんだか忙しないし、人の目に入って時間を気にさせてしまうのも避けたいところ。ならば、こんな時計はどうか。
本体が水平になったときだけ、つまり自分が見たいときだけ時刻を表示し、それ以外は時分針が役割を放棄するのだ。その間、針は重力に逆らわずダイヤル内にぶらりと垂れ下がった状態に。まるで時という束縛から解き放ってくれるかのよう。
実はこれ、革新的な時計作りを得意とするモーリス・ラクロアの人気シリーズに加わった新作「アイコン マーキュリー」で初搭載された「フリーハンド・システム(自由に移動する針)」という独自機構なのだ。逆に、この動き見たさに、意味もなく時計を見る/見ないを繰り返してしまいそうだけどね。
髙村将司=文