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究極のドレスウォッチとしての佇まい


広田雅将(写真左)●1974年、大阪府生まれ。腕時計専門誌「クロノス」編集長。腕時計ブランドや専門店で講演会なども行う業界のご意見番である。その知識の豊富さから、付いたあだ名は「ハカセ」。 広田雅将(写真左)●1974年、大阪府生まれ。腕時計専門誌「クロノス」編集長。腕時計ブランドや専門店で講演会なども行う業界のご意見番である。その知識の豊富さから、付いたあだ名は「ハカセ」。


広田 タンクに関していうと、四角くて変なカタチではあったけど、ドレスウォッチとしての基本は押さえていたわけです。二針でローマ数字。ドレスウォッチって、秒針がない、日付がないというのが基本スタイルなんですよ。数字はバーインデックス、アラビアインデックス、ローマンインデックスとありますが、ローマンインデックスがいちばん格式が高い。なぜかというと、ギリシャ・ローマ文化がヨーロッパの根っこにあるから。そのすべてを、タンクは満たしているわけです。

安藤 もちろんベルトはエキゾチックレザーですよね。

広田 そう。タキシードを着て、夜の光に反射していちばんピカピカ光って見える。実は、そこもタンクはちゃんと押さえている。

安藤夏樹(写真右)●1975年、愛知県生まれ。ラグジュアリーマガジンの編集長を経て、現在はフリーに。「SIHH」や「バーゼルワールド」を毎年取材し、常に自分の買うべき時計を探す。口癖は「散財王に俺はなる!」。 安藤夏樹(写真右)●1975年、愛知県生まれ。ラグジュアリーマガジンの編集長を経て、現在はフリーに。「SIHH」や「バーゼルワールド」を毎年取材し、常に自分の買うべき時計を探す。口癖は「散財王に俺はなる!」。


安藤 『007』でショーン・コネリーがタキシードにロレックスのサブマリーナーを着けたあたりから、時計のドレスコードはどんどん曖昧になってしまった気もしますが、だからこそ、僕はあえて1本、「ザ」がつくようなドレスウォッチが欲しいなと、最近思うんですよね。

広田 余談ですけど、ロレックスが普及した最大のデザイン要素はバーインデックスだと思うんです。フルバーインデックス。これって、貴族的なローマ数字、あるいは庶民が使うアラビア数字と違って、ユニバーサルフォントだったんですよね。基本的に、階級と関係ない。ロレックスがバーインデックスを使ったのは、ブランドの性格を象徴しています。

安藤 タンクに話を戻すと、最近はいろいろモデルが出ているので必ずしもすべてがそうでもないですが、基本的には薄くて悪目立ちしないところも、タンクのいい所だと思います。大きくて厚いいわゆる「デカ厚」時計に飽きてきた人には、すごく新鮮に見えるんじゃないですかね、とくに手巻きの「ルイ カルティエ」あたりは。

知人の私物を手に、語らいは続く。


広田 デザイン要素としては、時計のサイズとベルトのサイズが同じ。それはルイ・カルティエが戦車の軌道のようなデザインを、ということで、時計の幅とベルトの幅を限りなく近づけたんです。結果として、時計が主張しすぎなくなるわけですよね。持ち物で自分を誇示しないというのは上流階級では重要なんです。彼らはモノでステータスを誇示する必要がないわけですから。

安藤 まぁ、つまり、本来は上流階級のための時計ということですね。それが今や一般の人でも買えるようになったと。

広田 そう、カルティエはまさに「王の宝石商であり、宝石商の王」ですから、それをこの価格帯で買えるのは素晴らしいことだと思います。

 

※本文中における素材の略称:K18=18金、YG=イエローゴールド

【問い合わせ】
カルティエ 0120-301-757

関 竜太=写真 いなもあきこ=文

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