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スピードマスターだけが持つ「何にも代え難い魅力」とは


安藤 なるほど。その外枠と丈夫なケースのおかげで、アポロ計画のためのタフな試験をクリアできたと。一説によると、テストは市販で売られている複数のブランドの時計をNASAが購入して行われたと言われています。スピードマスターの場合には、アポロ計画より前に1962年のマーキュリー計画で宇宙飛行士の1人が個人的に宇宙に持っていったという“実績”も、心強かったのもかもしれません。
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広田 そうですね。セカンドモデルがマーキュリー計画で宇宙へ、さらにフォースモデルが世界で初めて公式に月面着陸したわけです。

安藤 その結果、ムーンウォッチという肩書きがついて、さらに偉くなっていったわけですね。以後、スピードマスター プロフェッショナルは機械のブラッシュアップやディテールの変更はあるものの、パッと見たときの印象は50年間ブレないまま。ムーブメントも手巻きを貫いているし。それが、マスターピースたる所以というか。
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広田 そうなんです。極端な話、月に初めて降り立った宇宙飛行士と同じ時計を買えるし、使えるわけですから。その魅力は何にも代え難いですよね。

安藤 さらに宇宙に行ったあと、ハイテク機器というイメージが生まれSFの世界からも注目されます。1971年放送の『帰ってきたウルトラマン』で、地球防衛チームの支給時計として採用されますよね。それは針がオレンジ色の特別モデルで、マニアの間では「ウルトラマン」って呼ばれてる。

『帰ってきたウルトラマン』で使用されていた幻のスピードマスターをベースに2018年復刻。まさに“帰ってきた”ウルトラマンな一本は即完売した。


広田 去年復刻されましたよね。でも、そういった華々しいエピソードがある割には、実は長い間、使う人はそれほど多くなかったんですよ。なぜなら、ケースを42mmに抑えたとはいえ、やっぱりデカかったから。今では考えにくいですが、当時、その特殊性からスピードマスターは「カルトウォッチ」と考えられていたんです。

安藤 宇宙には行ったけど、一般の人にはそんなに普及しなかった、と。言われてみれば確かに、『帰ってきたウルトラマン』に登場したなんて話も、ここ1、2年で出てきたことですよね。カルトなところからポピュラーな存在に変わるきっかけは、きっと腕時計トレンドが全体的に大きくなってきたという時代背景とも関係あるんでしょうね。

広田 そう、42mmというサイズも「意外にいいじゃん」と多くの人が思う時代になった。それは大きいと思います。

安藤 大きなサイズが人気を博し始めると、もともと高性能な腕時計として存在していたスピードマスターはすぐに時計好きに許容されたわけですね。そして、歴史を紐解いてみればアポロ11号と一緒に月面着陸するなど、いろんな逸話がある。そうやって、マスターピースとしての地位を築きあげた、ということなのでしょう。

 

※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール

関 竜太=写真 いなもあきこ=文

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