【エントリーNo.3】
ポストオーバーオールズ「NAVY BLUE - R」
「ファッションへの目覚めもアメリカ古着への傾倒も、きっかけはデニムだった」ーー生粋のデニム好きであるデザイナー、大淵 毅氏が1993年にスタートさせたのがポストオーバーオールズである。
ほかと一線を画すのは、アメリカで設立し、逆輸入的に一目置かれる存在となったこと。
大淵氏はヴィンテージワークウェアの考え抜かれたパターンや縫製仕様、完成されたデザインに感銘を受け、‘80年代から愛用している。
ブランドを始めて5〜6年はアメリカ製のデニム生地のみを採用し、その後はカナダ、中国、ヨーロッパの生地を選択肢に加えるも、やはり日本のクオリティを超えるものはなく、2019年に拠点を日本に移してからは日本デニムを中心に製作している。
「NAVY BLU-R」4万2900円/ポストオーバーオールズ 03-5942-1545
ヴィンテージを散々着てきたデザイナー曰く、ジャパンデニムは「過去の研究のおかげで、古い風合いの生地の選択肢が豊富」。特にサラッと乾燥したヴィンテージ調の仕上げでもわざとらしくない、さりげなくキャラクターがのった生地が好みだという。
そのオメガネに叶ったものを使って仕上げたのが、このカバーオール。その大元は、2010年に発表され、数年作られたのち廃盤となった伝説の一着、ネイビーブルー。
今回のRバージョンでは、ロングショールカラーやサイドシームを跨ぐハンドポケットは健在ながら、ビッグサイズのヴィンテージをイメージしてシルエットを調整。オールマイティに着回せる一着へと生まれ変わった。
【エントリーNo.4】
レッドカード トーキョー「Rhythm+」
2009年にスタートしたレッドカード トーキョー。そのプロデューサーが国内デニムのリーディングカンパニーで企画、生産に携わり、世界的デニムブランドのクリエイティブにも参画してきた百戦錬磨の本澤裕治氏であることも話題を集めた。
何より特徴的なのはレディスブランドからスタートした点だ。そこからして、ヴィンテージ第一主義のこれまでとは毛色が異なることは想像がつく。
それは、ひと度足を通すとより理解が深まる。
自然な佇まい、美しいシルエット、そして極上の履き心地。これらを兼ね備えたデニムは、男女関係なく身につける者を高揚させる。それこそ同氏が掲げる、デニムを作るうえで欠かせない要素とされる3F(FABRIC/FIT/FINISH)だ。
国内の最高品質のデニムを使い、数ミリ単位で微調整を行い仕上げたシルエットからは、しっかりとファッション的表情も顔を覗かせる。
「Rhythm+」2万900円/レッドカード トーキョー(ゲストリスト 03-6869-6670)
同ブランドの代表的モデルといえば、Rhythm。綿100%のような風合いながら、ストレスを感じさせないストレッチデニムで、テーパードがほんのり効いたスリムシルエットは、レッグラインをより美しく見せてくれる。
こちらはその最新版で、股上を2.3cm深くし、ウエストを1.5cm細くしたことでヒップ周りのフィット感を向上。クロップト丈にすることで足元もスッキリ。ライトオンスの生地は軽やかで、キックバックが強いため動きやすさもしっかり確保している。
デニムと日本人の体型を知り尽くした本澤氏の本領発揮といえるモデルである。
【エントリーNo.5】
ウエストオーバーオールズ「WEST’S JEANS”851S"」
2017年春夏にデビューしたウエストオーバーオールズは、一般的なデニムブランドとはひと味違う。それは、フランスのニームに誕生し、渡米後に一躍その名を知られるようになったという架空のエピソードをテーマとしているからかもしれない。
ラインナップするデニムは、シルエットバランス、生地、ディテールワークがことさら目を見張る。それもこれも、ヘリーハンセンやオールドマンズテーラーなどのクリエイティブに参画してきたデザイナー、大貫達正氏の広い知見によるところが大きい。
例えば、「オーバーオールの胸元のビブをカットして生まれた」といわれるデニムの成り立ちに着想を得て、ベルト部分のパーツを省いたウエストラインはいい例だろう。
ほかにも、リベットではなく、補強縫製のバータック(カンヌキ)で仕上げたバックポケットや、色移りを防ぐために施したベルト部裏のブランドロゴを配したマーベルト風ゴムなど、ならではの意匠がそこかしこに散見される。
「WEST’S JEANS”851S"」2万900円/ウエストオーバーオールズ(ストール ショールーム 03-6812-9371)
ブランドの定番として君臨するウエストジーンズ“851S”。生地を岡山県で織り、それをボディと同色の”コア糸”と呼ばれる、ポリエステル芯の周りを綿で覆った強度の強い糸で縫いあげ、さらに茶金の糸と使い分けることで、デニムらしさを損なわずモダンな表情に仕上げている。
特徴的なのがシルエットで、ウエスト周りにゆとりを与え、インとアウトのシームでラインを調整。膝位置を通常よりも高く設定することで、ゆとりを感じながらもはいたときにシルエットがすっきり見えるように作られている。
新作となるこちらは、従来のモデルに比べ股上を浅くし、ヒップ周りをシャープに、レングスを長めに仕上げた。
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本家アメリカンデニムも確かにいいが、日本人の体型や誰もが憧れたヴィンテージの風合い、そして履きやすさやファッション性も加味して作られたジャパンデニムも無視できない。
この5ブランドの逸品を目の当たりにすれば、きっと誰もが手を伸ばしたくなるはず。
「世界最高峰! 日本デニムの今」とは……「デニムと言えばアメリカ」。かつてのヴィンテージブームを経験した人たちはそんな先入観を持ちがち。しかし今、世界を見てみると、プロはこう口を揃える。「デニムと言えば日本」。なんで? 方々から探る、世界最高峰、日本デニムの今。
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