ところで、中谷宇吉郎が育った片山津って?
雪の科学館の奥に聳える白山。
北陸の霊峰・白山を望み、日に何度も湖面の表情が変わる柴山潟を持つ石川県加賀市片山津は、加賀温泉郷のひとつで、かつては花街として栄えた場所だ。
中谷が育った明治末期から、特に昭和にかけては賑わいを見せ、さまざまなカルチャーが入り乱れていた。
そうした歴史が醸し出すノスタルジーなムードは今改めて注目を集めており、街をあげてのイベントも定期的に開催されている。
フィッシャーによるイベントの際にはちょうど「ノスタルジーしよう2」という1カ月の催しの真っ只中で、音楽あり、ゲームあり、ライトアップありのナイトアウトな街を楽しむ人たちがたくさんいた。
その一方で、超モダンな感性も同居するのが現代の片山津。
雪の科学館は磯崎新、近くの片山津総湯は谷口吉生が建築しており、少し離れたところには話題のセレクトショップ、
フェートン(PHAETON)がある。
雪の科学館の中庭には、中谷宇吉郎の娘で、メゾン・エルメスで個展も開催した霧のアーティスト・中谷芙二子の作品がある。
今も昔も、ボーダーレスになんでも飲み込む街で中谷は育った。そう考えると、彼がミクスチャースタイルだった理由も、少しわかる気がする。
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本来、雪がないフィールドで開催している冬季オリンピックと、そこから連日届くアスリートたちの奮闘記。その背景にあった、ひとりの男の人生。これらのつながりを感じると、上質な雪を持つ日本の冬が、とても贅沢に思えてくる。