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「何者かになりたい」


田中社長

自身の性格について、面倒くさがりだと語る田中さん。しかし、面倒くさがりにも関わらず、なぜ何度もゼロから起業や事業の再生に乗り出せるのだろうか。

そう尋ねると田中さんは「なんでかな。自分でもなんでこんな面倒くさいことやってんのかなーって思いますよ」と言って笑った。

しかしその根幹には、幼少期からのブレない想いがあった。

「子供のときから、ずっと“何者か”になりたいんですよ。でもまだ何者にもなれていないわけで。そのギャップを埋めるために、ここまでやってきているのかもしれない」。

有名人になりたい、歴史に名を残したい、たくさんの人を救いたい……田中さんの語る“何者か”とは、一体どういう人物なのだろう。

「自分がいたことによって、世の中が少しでも変わったことを実感したい。それを実感できるぐらいの“何者か”になりたいですね。だって僕が明日もし死んでも世界はなにも変わらないじゃないですか。僕の父がまさにそうだったから」。

“何者かになりたい”、その根幹には少なからず亡き父への想いがあった。

「僕の父は、58歳の若さで急逝しました。ちょうど僕がOWNDAYSを始めた翌月のことです。でも今となっては誰も彼のことを知らないし、思い出さない。話題にも上らない。息子である僕ですら、たまにしか墓参りに行きません。まだ亡くなって10年やそこらなのに存在が消えてしまう。そこに対する虚しさ……漠然とした恐怖みたいなものが、ずっとあるんですよ」。

田中さんの原動力はそこにあるという。

田中社長

「死ぬまで別に何者にもなれないかもしれないし、もしかしたら俺が居たことでけっこう世の中変わったじゃんってちょっと満足して死ぬのかわかんないけど。『あれをやったのはうちの親父だぜ』って子供が自慢してくれたら、一番うれしいかな」。

人類の進化のなかでは小さな一歩かもしれない。しかしそんな前進する一歩を、自分でつくりたい。


『タクシーに揺られながら、流れ行くシンガポールの幻想的な夜景を眺めていると、亡くなった父親に言われた言葉が頭にふとよぎった。『男なら荒れる海を越えていけ。そして自分を試してみろ。広い大海原で思うがままに舵をとれ』
(『破天荒フェニックス』P.330より)


『破天荒フェニックス』の一節に書かれているように、OWNDAYSは、大荒れの海で自由に舵をとる船長と、その破天荒な航海を楽しむクルーが一丸となって進む船のようだ。

そして田中さんなら、たとえこの先、船が難破したとしても、きっとまたどうにかして新たな港に辿りつけるのだろう。



藤野ゆり(清談社)=取材・文 小島マサヒロ=撮影

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