暑さ&雨に弱い「エナメル靴」。輝きを取り戻す方法と保管の注意点
連載「愛する靴の愛し方」
お気に入りを履き潰しては買い替えて……なんてもったいない! 愛する一足を守る術をフットウェア・ラバーたちに教えてもらった。
革靴をこよなく愛する靴育て研究家の明石 優さんに伺う、素材別革靴のケア方法。
前回のスエードに続いて説明するのが、エナメル革(パテントレザー)について。
エナメルといえば水が浸透しにくく、雨の日には適した靴なのでは? と思いがちだが、明石さんいわく「エナメル靴は、か弱い子」なんだとか! 誤解されやすいエナメル革の適切なケアと保管方法を深掘りする。
熱や湿度に弱く割れやすい。それがエナメル
「エナメル靴は、本革の表面に塩化ビニールやウレタン樹脂などでエナメル加工を施しています。コーティングに使われるそれらの素材は、熱や湿気、寒さに弱く、劣化して溶け出すこともあるデリケートなものなんです。水が染み込まないとはいえ、正直雨の日の着用は避けたいですね」。
雨に濡れてしまうと最悪の場合、内側の本皮が膨らんで外側のエナメルが本皮の伸縮に耐えきれず、バリっと割れてしまうことがあるそう。逆に本皮が乾燥する際に縮むことから、エナメルも一緒に縮んで消えないシワになってしまうという。
簡単ケアで、美しい光沢を取り戻そう
「クリームが素材に浸透しないエナメル靴は、表面の加工部分のケアがメイン。できることが限られているので、ものの数分で終わりますよ。手軽なうえ、すぐに光沢が出てくれるので、ケアのやりがいがある素材かもしれませんね」。
それでは、エナメル靴のケアを実践!
まずは基本のブラッシング&汚れ落としから
用意するものは、たったこれだけ。水の使い道はいかに?
「はじめは、豚毛のブラシで全体のホコリを落としましょう。これはどの素材の靴も共通です。次に綿の布に靴用の汚れ落としを取り、表面の汚れを拭き落としていきます。エナメルはこれだけでもかなりキレイになると思いますよ」。
水でツルピカ。窓掃除をイメージして
「ここで、水の登場です。ガラス掃除をする際、水拭きをしてから乾拭きをするとピカピカになりますよね。エナメル靴のケアも、同じ要領で行います。水をつけた布で表面が乾くまで磨いていきます。するとガラスのようにツルッとキレイに」。
エナメル靴用のケア用品もあるけれど、実はシリコンと水が主な成分。そのため、水だけでも代用が可能とのこと。今すぐにでもトライできそうだ。
湿気は大敵。保管するときは靴同士を離して!
先述したようにエナメル靴は、弱点の多い“か弱い子”。保管方法にも注意が必要だそう。
「エナメルは湿気や熱に弱いことから、夏場になると表面のコーティングが溶けてしまうことがあるんです。エナメル同士をくっつけたまま長期間保管すると、靴同士が剥がれなくなり、消えないシミになることも。離して保管をするか、片方ずつ布袋に入れてあげるといいですね」。
他の革靴と同様に、風通しが良く、直射日光に当たらない場所での保管が基本。気温が上昇する車中での「置き靴」も、絶対に避けたほうがいいとのこと。
素材ごとに弱点もケア方法もそれぞれ異なる、奥深い革靴の世界。愛する靴の“攻略テクニック”を使いこなして、ステキな革靴ライフを送ろう。
[お話を聞いた人]
明石 優茨城県出身。靴育て研究家、絵描き。2006年靴磨きを始める。シューズラウンジ「brift H」(ブリフトアッシュ)の立ち上げに参加。百貨店、一流アパレルブランドのイベントなど靴磨きパフォーマンスを経験。2011年独立。シューシャインイベントに出演など、さまざまな場所で日本には数少ない靴磨きの講師としても活躍。アーティストとしても活躍中。 Instagram:
www.instagram.com/akc_yu/ 平安名 栄一=人物撮影 長浜優奈(EditReal)=取材・文