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東京生活との違いは100%消費者ではなくなったこと


東京を離れる決断をしたのは37歳のときだ。条件にベストマッチする現在の家をネットで見つけるまでに、そう時間はかからなかった。新宿御苑のマンションを売り、木々に囲まれた君津市での田舎暮らしが始まった。

友人のイラストレーターせきねゆきさんに描いてもらったという平井さんご家族。親子3人の姿がなんとも微笑ましい。額縁はこれから製作予定だ。


印象的だったのは、平井さんが東京の生活を振り返るとき、「逃げたくてたまらなかった」と、「逃げる」というフレーズを繰り返したことだ。そこにあるのは、東京での生活で感じたぬぐい去ることのできない違和感だった。

「僕は埼玉県出身で、東京の生活に憧れていた時期もありました。でも、住んでみると、どうしてもピンとこない。東京は嫌いではないけれど、結局お金を使わないと何もできない。そのジレンマが常にあった気がします」。

逃げると聞くと、ネガティブなイメージを持つかもしれない。しかし、平井さんは「逃げたっていいじゃないですか」と笑顔で語りかける。



「僕は仕事も住まいも転々としてきましたが、実際に働いたり住んでみないと向き不向きはわからない。だから心や体を壊すくらいなら、別に逃げてもいいと思うんです」。

だからといって、組織に属することや東京の生活を否定するわけではない。人それぞれ、向き不向きもある。「これが正解だ」とは一概にはいえないのではないか? それが平井さんの得たひとつの結論だ。



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