オルタナティブに生きるパーマカルチャーの人々
雑誌で「パーマカルチャー」の特集を目にしたのもそのころだ。
パーマカルチャーの解釈は人によって異なるが、「農的暮らしの永久デザイン」という日本語訳が一般的とされる。基本的には、人が自然に手を加えることで、自然環境を含めて豊かにしていくという考え方で、化学肥料を使わず自然の力をそのまま取り入れていくことを理想とする。
平井さんも、もともと自給自足への憧れはあったが、パーマカルチャーというライフスタイルを実践する人の存在を知ったのは、そのときが初めて。型にとらわれずにオルタナティブに生き、パーマカルチャーを実践している人々の姿がまぶしかったという。
「母の実家が秋田県にあり、山でも海でもすぐ行けるような場所だったので、小学生のころは夏休みをずっとそこで過ごしていました。その思い出が、どこか原風景のように心の奥底に残っていたんでしょうね」。
震災から1年後の2012年、平井さんは妻とともに神奈川県で開かれていた「パーマカルチャーセンター」に通い始める。座学や実習でパーマカルチャーの理念を学ぶことで、さらにその憧れを強くした。
「たとえば、いま僕が暮らすこの家にいずれ住まなくなっても、最後には家が朽ちてもそのまま森に帰るような、自然にとってマイナスにならない、循環性のある暮らし方がしたいと思いました。だから、この家では、井戸水や雨水を使用したり、野菜を栽培したりしています。君津は水が豊富でおいしい。それもここで暮らそうと思った理由のひとつになりました」。
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