PREMIUM BRAND × DAILY STYLE
VALENTINO ヴァレンティノ
見事に若返りを果たし、現代モード界を牽引する新生ヴァレンティノ。その新作から、夏に似合うデイリースタイルをお届けする。
2018年春夏、ヴァレンティノのコレクションのキーカラーは黒である。そこへ巧みに加えられる季節の気分。こちらの開襟シャツなら、ボディに咲く大小のハイビスカスや、スパンコールで表現した胸のグラフィックがそれである。上質なコットンレーヨンとともに、アロハによく見るスーベニア的なチープさは皆無。そうした魅力は、奇をてらわずシンプルな味つけで楽しみたい。
ミリタリーにおけるワッペンは勲章や所属を示すもの。つまり“戦い”と密接な関係にある。それをポップに置き換えたのが、ミリタリーシャツの両胸を彩るスパンコールの装飾。愛し合う2羽のフラミンゴと「HOLYDAY」と入ったサボテンのイラスト。両者に共通するピースな雰囲気に込められたメッセージは何かと、深読みしたくなる。
色とりどりなスパンコールを重ねることで描いたランドスケープは、新印象派の点描画みたく気の遠くなるような作業の集積によって作られる。あえてずらしたようなデニムの濃淡とステッチ跡の加工も手の込んだギミックだ。アートとも工藝ともいえる“作品”をトラッカージャケットでデイリーに背負う感慨は、デニムがもたらす新しい感動となる。
薄いピンクから燃えるようなオレンジへと移りゆく夕空のグラデーション。シルエットとなって浮かび上がるパームツリー。サマートレンドの筆頭株であるアロハシャツを、モード界の寵児・ヴァレンティノは思い切りロマンティックに調理した。その美しさをブラックパンツで引き立てる。ウエストに覗くさりげないスタッズが、モードなスパイスだ。
ライン入りジャージージャケットは星形のスタッズで装飾を。スラックスにはベルトを付け、ポケットにフラップを装備して変化球的な顔立ちに。そして、アッパーに’80年代の「VLTN」ロゴを復刻させたシャワーサンダル。スタンダードなワードローブをモダンにアップデートさせるデザインの数々、そのさじ加減が絶妙だ。
ヴァレンティノといえば「赤」といったブランドアイコンとして、2016年から舵を取るクリエイティブディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリが根付かせたものにスタッズがある。ゆえに、ラムレザーのライダーズ全面に打ち込んだスタッズがただの飾りではないことは明白。ちなみに、本作の裏地は鮮やかな赤。この一着がスペシャルなこともまた、明白なのである。
小林直人=写真 山田陵太=スタイリング 森岡祐介=ヘアメイク