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人の心をキレイにすることがビーチクリーン活動の狙い

こうしたオリジナル機材を使いながら、「素足で歩ける砂浜を次世代へ」をテーマとするビーチクリーン活動は行われてきた。

実施回数は北海道から沖縄まで全国212のビーチで計385回。社会貢献推進室の前原洋一氏によれば、海のあるすべての都道府県で行ってきたという。

「実施にあたっては、各地の四輪ディーラーで組織するホンダ会を中心に地元へ働きかけ、自治体から依頼をいただく形を基本ルールとしています。

例年30件近くの開催要望があるのですが、開催地を選定する際には、作業を効率的に行うためにも機材を運搬する10tトラックを海岸近くに駐車させられ、スムーズに機材を砂浜に降ろせる環境であることを条件にしています」。

「ビーチクリーナー」をはじめとする機材は埼玉県朝霞市、三重県鈴鹿市、熊本県大津町の各拠点から運び出される。北海道で開催されたときも朝霞市からフェリーを利用して現地に運んだ。すべての費用はもちろんホンダ持ちだ。

それにしても一個人の発案で始まった事業になぜそこまで注力するのか。そこにも“技術で世の中の役に立ちたい”という想いがある。

「この活動の真の狙いは人の心をキレイにすることにあるんです。砂浜をキレイにできたら気持ちがいいですよね?

もしビーチクリーン後に参加者が満足感を覚え、清々しさを抱ければ、次に汚れた砂浜を見たときには率先してゴミを拾うと思うんです。何よりゴミを捨てようと思わなくなる。

そうした心の変化を生むこと。それが本当の狙いなんです」。

前原氏の言葉を受けて、木村氏は機材全体の開発余地に触れた。現状は人の手を必要とするが、開発すれば全自動化も可能なのだという。

「でも今のところは、あえてしていません。全自動だと人は見ているだけとなり、“ゴミがあるから拾おう”“ゴミを捨ててはいけないんだ”と思いいたらないからです。この活動における我々の目標は、やがて活動自体が不要となること。

ホンダが掲げる理念のとおりに、技術で砂浜をキレイにし、地域に暮らす人の生活を豊かにする。そしてその状況がホンダの活動がなくなっても続いていくことが最終的な目標なのです」。

創業以来、モノづくりに邁進してきたホンダによるビーチクリーン活動の目的は、掃除をしたあとの一時期だけ裸足で歩ける状況を生み出すことではなかった。

見据えるのは美しい砂浜の永続化。いわばこの活動には、人の心を育てる教育的な側面も備わっているのである。

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PAK OK SUN(CUBE)=写真 小山内 隆=編集・文

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