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ハワイで生まれて、アロハの精神に包まれて育ったことは本当に幸運


KY ネイティブハワイアンのオリンピック選手として、これまで伝説の競泳選手デューク・カハナモクさんと比較されてきたと思います。オリンピックに臨むにあたって、彼の偉業から受けた影響はありましたか?

ホノルルのサウスキング通りとペンサコーラ通りの建物に描かれた壁画。

ホノルルのサウスキング通りとペンサコーラ通りの建物に描かれた壁画。


CM デュークさんはレジェンドですし、ずっと私の模範でしたから、これからも同じ文脈で語られる機会は多いでしょう。私はワイキキで生まれてサーフィンを始めて、毎日彼の彫像を目にしてきました。デュークさんには素晴らしい伝説があります。誰にでも親切な心で接して、何の見返りも求めずに自分のものを分け与えたのです。デュークさんは誰よりも寛大でした。アスリートとしても、オリンピアンとしても、「水の男」としても傑出した人物だったと思います。

幸運だったんですが、オリンピック前にたまたまデュークさんのドキュメンタリー番組を見たんです。彼の生い立ちを知ることで、改めてネイティブハワイアンであることの意味を実感して、民族を代表するために全力を尽くそうと思えました。デュークさんの夢は、サーフィンがオリンピック競技になることでした。私はハワイに誇りをもたらしたいと思いました。私が出場しようとしていたのは、単なるサーフィン大会ではありません。私よりずっと大きな存在だったのです。

アーティストのカメア・ハーダーさん。撮影:ジョン・フック

アーティストのカメア・ハーダーさん。撮影:ジョン・フック


KY インスタグラムで、あなたとデュークさんが親しげに並んだカメア・ハーダーさん作の壁画をご覧になったという投稿を見ました。高所恐怖症とのことですが、壁画をご覧になったときはどう感じましたか?

CM 正直言って、ただただ衝撃を受けました。そういうものが製作中らしいとは聞いていましたが、この目で見るまで実感が湧かなかったんです。巨大な壁に私の顔を描いてもらえて、しかも隣には私のヒーローがいる。こんな光栄なことはありません。これからも自分の舞台で存分に力を発揮して愛を伝えたいし、できればデュークさんのアロハ精神の伝説を受け継ぎたいとも思っています。

カメアさんが成し遂げたのはまさに偉業です。どうやって小さな紙の写真からあんな大きさの壁画ができるのかさえ想像がつきません。私と同じく、彼も高所恐怖症なんですよ!(笑い)どうやってあんなところに1日中立って描き続けられるのかしら。

知れば知るほど、カメアさんの魅力もわかっていきました。彼は自分の作品に多大な労力を掛けます。デュークさんのメダルについても詳しく調べて、メダルのリボンまで探り当てたんです。私のリボンとは違いますよね。ほかにも、この壁画には多くの意味が込められています。本当に多くの調査と愛情と時間を掛けているんです。そして、地元の人たちの愛にも感激しました。みんなの愛は、いつも特別で心が温まるんです。

KY 父と私は、ハワイからあなたのサーフィンを見るのが大好きです。その一番の理由は、カメラに映っていてもいなくても、あなたがいつもアロハの精神を示してくれることです。あなたにとって、「アロハ」はどういう意味を持っていますか?どういう存在ですか?

CM 重要な質問ですね。私にとってアロハは「愛」です。ハワイで生まれて、アロハの精神に包まれて育ったことを本当に幸運だと思っています。私の家族は、血縁関係のある人だけではありません。水の中で毎日出会う人や、挨拶して私の調子をたずねてくれる人は、みんな家族です。今まで交わしてきたやり取りは、どれほど些細なものも含めて大切なものばかりでした。

競技で抜きん出た成績を上げたり、人生で偉業を達成したりした人は、確かにヒーローです。でも本当のヒーローは、実体があって触れることができて、私を思いやってくれる人たち。愛には終わりがありません。大会は、今日勝てたとしても、明日には新しい勝負が始まります。でも、地元の人からもらった気持ちはずっと忘れません。それが愛であり、アロハなのです。

ハワイのオアフ島のマカプウビーチに立つカリッサ・ムーアさん。画像提供:レッドブル/スティーブン・リップマン

ハワイのオアフ島のマカプウビーチに立つカリッサ・ムーアさん。画像提供:レッドブル/スティーブン・リップマン


KY ムーアアロハについても話してもらえますか。どんなきっかけで始まったのでしょうか?

CM ムーアアロハは慈善団体で、立ち上げたのは2018年です。ビーチでその地域の子供たちを招待するイベントを開催していたハーレー・サーフ・クラブという団体をヒントにしました。そのイベントは、プロサーファーをひとりずつ招いて、講習会や指導を行うというものでした。私が講師を務めたのはケワロ湾でのイベントでした。

参加した30人の女の子たちはみんな目を輝かせて、あらゆる情報を吸収しようとしていました。教える機会も貴重でしたが、それ以上に、子供たちの笑顔や楽しく盛り上がる姿を見て報われた気持ちになったんです。私自身も元気をもらえましたし、素晴らしい時間でした。ずっと恩返しする方法を探していた私にとって、このイベントは大きな気付きになりました。

今の時代、若い女性はきわめて厳しい状況に置かれています。本当の自分でいることを否定されることも多いです。女の子があるがままの自分でいて、そんな自分を周りと共有したり新たな自分を創造したり鼓舞したりしたいと思ってほしい。どんな日を作ればそうなるだろうかと考えました。私はトップに立ってからも友達がいなくて、とても孤独でした。ムーアアロハの目標は、私と同じような女の子たちが好きなことをして、その過程で愛を与えられるようになることです。

KY 今のあなたはオリンピックの金メダリストです。これから達成したい目標はありますか?

CM 実は、今まさに思い描いているところなんです。サーフィンの技能に関する目標もたくさんありますし、慈善団体の活動も続けたいと思っています。あとは、いつか――いつになるかはわかりませんが――ぜひ母親になりたいです!将来必ず達成したいと思っています。


本インタビューは、長さを調整して文意を明確にするために編集が施されています。

This article is provided by “FLUX”. Click here for the original article.

レッドブル/スティーブン・リップマン=写真提供 カイリー・ヤマウチ=文 
加藤今日子=翻訳

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