デビューシーズンでパリのcolette(コレット)がオーダーをつけ、たちまち世界的ブランドとなった日本のスニーカーブランド「Flower MOUNTAIN(フラワーマウンテン)」。
ブランド誕生までの道のりを聞いた前回に続き、後半ではその成長を追う。
スニーカーは工場以外からも生まれていい
「フラワーマウンテン」はヤンが足しげく通う山の名から採った。といっても、それは正式な名称ではない。親しみを込めて名づけたニックネームだ。
「『フラワーマウンテン』はジャンルでいえばアウトドアシューズ。自然界をモチーフにしたデザインが見どころです。ハッピーな響きだし、これでいいじゃないかと即決でした」。
幾重にも折り重なる柔らかなラインは山の峰を、ゴツゴツとした突起は岩肌を思わせる。そこにリアリティをもたらすのが、随所に施されたステッチやパンチングにみられる手仕事だ。
「スニーカーの多くはオートメーション化された工場から生まれるもの。それを否定する気はさらさらありませんが、そうじゃないスニーカーがあっても面白いのではと、かねて思っていました」。
最近のミニマルなデザインに慣れた目には満艦飾な佇まいだが、不思議とやさしい。自然の力といってしまえばそれまでだが、フラワーマウンテンのすごみはそのすべてを見事に調和させるデザインワークにある。
「昔から密なデザインが好きでした。取引先の仕事も少々やりすぎることがありましたね(笑)。ショールームを構えた今でも週の半分は自宅の一室で作業していますが、こちらも混沌としており(笑)。僕には根っからミニマルという発想がないようです」。
アッパーのデザインはそれぞれのアイデアを持ち寄って詰めていくそうだが、ソールに関してはほぼ太田が手掛けている。取引先からのオファを受けるうちにどんどんハマっていったという。今シーズンは硬度の異なる2層構造のソールが登場。定評のあった履き心地をさらに高めている。
「パフォーマンスを左右するパーツであるのみならず、デザインとして見たときも無限大の可能性がある。最先端の技術、素材という面では劣るかもしれませんが、デザインは名の知れたソールメーカーにも負けていないと思う。僕らのデザインに興味を持っているグローバルブランドもあるんですよ」。
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