パリ、ミラノ、NY、香港……「フラワーマウンテン」の快進撃
本来、靴の世界において手仕事といえばドレスシューズにいくのが定石だ。大量生産の商材にあえて手仕事を、というのはたしかに攻め方としてはありだが、いったい何がその道を選ばせたのか。
「もしかしたら音楽を通して慣れ親しんだセッションのノリがあったのかもしれません。たまたま顔を合わせたミュージシャンが即興で、その場の雰囲気で音をつくる。そこには思いもよらないような化学反応があらわれます。
そこには思いもよらないような化学反応が生まれます。これを『フラワーマウンテン』に置き換えれば、プレーヤーはスニーカーというプロダクト、自然界というモチーフ、そして手仕事ということになる。考えてみれば、ヤンとタッグを組んだのはまさにセッションでしたね」。
そもそもアイテムとしてみたときもスニーカーには魅力を感じる。世界を舞台に戦うならば、それはドレスシューズではなくてスニーカーだろうと思った──と語る太田の読みが正しかったことは、取引先の顔ぶれをみればわかる。
ストリートシーンで別格の存在といわれるKITH NY(キースNY)はじめ、イタリアのANTONIOLI(アントニオーリ)、RINASCENTE(リナシェンテ)、SLAM JAM(スラムジャム)、ドイツのTHOMAS I PUNKT(トーマス アイ パンクト)、ロシアのiLAKMUS(イルクマス)、シンガポールのROBINSON(ロビンソン)……といった具合に名だたるショップがずらりと名を連ねる。
日本ではイセタンメンズが数シーズン前からプッシュしており、ポップアップストアは3シーズン目を迎えた。
この取材を終えた太田は慌ただしくヨーロッパへ飛んだ。マルケのディストリビューター、パリのショールームとの打ち合わせをこなしつつ、ピッティ・ウオモへ出展するためだ。メジャーブランドへと成長した今も年間で5つ以上の見本市にブースを構えているというから驚いた。
「そこはやっぱり、せっかくの新作ですから。みんなにいち早く見てもらいたいんです。ものづくりのよろこびは、お披露目の瞬間にあります」。
[問い合わせ]ブリースデザインhttps://www.flower-mountain.co.jp 竹川 圭=取材・文