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なぜこの過酷なレースが多くの人を惹きつけるのか?


この疑問に答えるには、まずは昨年の話をしなければならない。

RED BULL 400が日本で開催されるのは、今年で3回目。筆者は昨年に続き2回目のエントリーとなるが、大倉山ジャンプ台を初めて目にしたときは「仮病を使って欠場しようかな……」と真剣に考えたほどだ。目の前にそびえるジャンプ台の高さと傾斜は、それくらい想像を遥かに超えていたのである。

仮病作戦を使おうかとトレイルランナーの反中祐介選手に相談してみると、「制限時間は15分なんですけど、南井さんの脚力ならゴール出来ないってことは絶対にないですよ。まあまあキツイですけどね」と笑っていた。

観念して実際に走ってみると、その心拍数の跳ね上がり方も想像以上。途中からは四つん這いで、少しづつ、少しづつ歩を進める。コースのいちばん左端を進んだので、TV中継でお馴染みの円形の距離表示の数字が90m、89m、88m……と段々少なくなっていくのがよく見える。

ランディングエリアを越えて、踏切台へと向かう急な木製スロープを通過したら、あとは滑走エリア。スキージャンパーが猛スピードで滑り下りる場所を逆走して上るのだから、よく考えると本当にクレイジーな競技だ。

ここの部分も木製のスロープなので、木のささくれや棘から手を保護するためにも軍手などの手袋はあったほうがいい。しかし昨年はわざわざコンビニで購入した軍手をホテルに忘れてしまった&前半でペースを抑え過ぎて余力も残っていたので、滑走エリアのほとんどを脚だけで進み、かなりの参加者を抜くことができた。

去年は最後のスロープで余裕を残し過ぎたのが反省点だった。


タイムは7分56秒。時間にすると8分弱だが、そこにはさまざまな気持ちの変化があり、まさに人生の縮図だった。最初の100mは下りだから、「もう4分の1終わったのか! 意外と楽勝かも!?」などと思ったが、上りに入ってしばらくすると脚の動きが鈍くなり、「一体誰がこんな競技考えたんだ……」とネガティブな気持ちに。それでも一歩一歩進んで300m地点の踏切台に到着すると、まず最初の多幸感が訪れる。

そしてラストに10人以上の参加者をごぼう抜きにしたときは、優越感と同時に「あれ、もう少し前半から飛ばしたら、もっと上位に行けたかも……」と、ややもったいなく思う気持ちも生まれた。また、ゴールしてしばらくすると「このやり遂げた気持ちはなんだろう? この達成感はフルマラソンでもなかなか経験できない。来年も絶対に出よう!」と決意するに至ったのである。



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