自然の中だからこそ、ふいに気づかされる成長の跡
隆司さんは、こうした“親子横並び”のスタイルを徹底してきた。驚いたのは、子供たちにも1人1つ、調理用のツーバーナーを与えていることだ。
「IHの時代になって、子供は火を知らなくなった。『近づくだけでも熱い』とか『これくらいの火加減ならこんな焼き加減になる』とか、リアルに体験しなきゃわからないですよね。危ないから遠ざけるのではなく、自分のギアとして興味を持った経験のほうがより理解が深まると思い、1台ずつ与えています。もちろん、危険性については十分に教えて、火傷にも注意します」。
自分の愛用品だからこそ、仕組みを理解し、大切にメンテナンスもする。夕食時になると、結菜ちゃんはここぞとばかりに“相棒”を使い、調理を楽しむという。
ツーバーナーだけではない。アウトドアブーツからテントのペグ打ちハンマーまで、あらゆるギアを与えて、メンテナンスまで教えるのが山中流。休日には、親子揃ってギア探しに夢中になったり、一緒にブーツをブラッシングしたりする。
「0歳からキャンプを続けてると、子供の成長は実感しますよ」。
そう言って、しみじみと目を細める隆司さん。最近も、ささやかな成長を発見した。
「冬にキャンプをしたとき、結菜が凍った地表を指差して『これ、霜柱って言うんでしょ?』って。どうやら図鑑で見て知ってたらしいんです。些細だけど、知らなかった娘の一面を感じた瞬間ですね」。
いつもとは違う自然の中だからこそ、ふいに光る子供の成長。キャンプとともに年を重ねる親子は、きっとこれからもそんな瞬間に何度も立ち会っていく。
【取材協力】コールマンwww.coleman.co.jp/ 佐藤宇紘=取材・文 澤田聖司=撮影 ※一部写真は山中さんより提供