公的制度を上手く活用すれば、医療保険が必要ない場合もある
次に、医療保障の見直しだが、平野さんからは、
「医療保険はそれ自体が必要かどうかを見直すことが重要」と驚きの発言があった。だって、もしも入院したら、お金がかかっちゃうじゃないですか。
「日本は公的制度として、『高額療養費制度』が存在します。年齢や所得に応じて支払う医療費の月の上限が決まっており、それを越えた分は申請すれば戻ってくるのです(入院時の食費、個室などの差額ベッド代、保険外治療は自己負担)。
また、企業の健康保険組合によっては、1カ月間の医療費の自己負担限度額を高額療養費制度が適用される金額より低く決め、限度額を超過した費用を払い戻してくれる『付加給付』といった制度もあります。最近は入院期間も短くなっているので、こういった制度を活用することを念頭に、医療保障には入らず貯金をしておくほうが、無駄の少ないケースもあります」。
ただし、入っていたほうが良い医療保障の保険商品もある。平野さんは「
治療期間中は給付金が受け取れるタイプのガン保険に、就業不能保険を加えるとより安心」と教えてくれた。
「保険の加入は、発生確率と損失額の組み合わせで考えます。例えば若くして亡くなったりガンになったりする発生確率は小さいが、もしなると収入が失われたり減ってしまう損失は大きい。こういったものには保険を掛けておくのです。逆にさまざまな病気やケガで治療費がかかることは、発生確率は多いが損失額は小さい。こういったものは、貯金で対応が可能です」。
そこで、発生確率は小さいが損失額が大きい若い年齢での死亡やガンに備えて、生命保険やガン保険への加入となるわけだ。
しかし、ガンも健康保険の対象となる治療だけなら高額療養費制度や付加給付で対応が可能だ。問題なのは、治療費というよりも、抗ガン剤など通院治療が長期化することによって収入が減ること。
実際、就業不能までいかなくても、治療の負担により配置転換や時短勤務など働き方に配慮してもらう、あるいは転職するケースは珍しくない。こういった収入減にはどう備えればいいのだろう。
「一般的なガン保険は、ガンと診断されたら一時金、加えて入院期間に応じた入院給付金が支払われます。しかし、これらの保障では通院による抗がん剤治療が長期化しても給付金額が増えるわけではありません。そこで、主な保障が治療期間と連動するもの、例えば抗がん剤などの治療を受けた月は20万円が受け取れるという保障を選べば、通院治療であっても保険金が支払われる。治療の長期化で収入減に見舞われても、とりあえず収入が補てんできます」。
「これに加え、全く働けなくなったときに給付金が支払われる就業不能保険も加入しておくといいでしょう。また、勤めている会社や所属団体によっては、社員や団体員だけが加入できる、GLTD(団体長期障害所得補償保険)という保険があるので、こちらも検討しましょう」。
20代前半になんとなく入った保険。それから約20年も経過していれば、ライフスタイルも大きく変わっている。実は、保険を見直すということは、現在のライフスタイルを確認して未来に必要なことを考える作業にほかならない。
人生100年時代だからこそ、これからかかるお金と入ってくるお金、そして、不測の事態で足りなくなるお金をしっかりと把握しておくようにしよう。それが出来ていなければ、万が一のときに破産をして、ゲームオーバーになってしまうぞ。
次回は、37.5歳から入っておきたいイチオシの保険について。基礎に続く応用編で、守備固めといこう。乞うご期待。
コージー林田=取材・文
【今回のマネー賢者】平野雅章2000件超の実績を持つ相談専門ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)。百貨店・外資系メーカーでマーケティング・マネージャー等を務めた後、大手保険ショップ運営会社のマーケティング部門でPRや保険ショップの新ブランド立ち上げを手掛ける。2007年ファイナンシャルプランナーとして独立。サラリーマン家庭の経済的な不安解消を使命とし、横浜FP事務所を主宰。2011年より一般社団法人全国ファイナンシャルプランナー相談協会の代表理事。神奈川県立産業技術短大で非常勤講師も務める。