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■入団はスタート。木村の理想のプロ像


プロ野球選手ってどんな選手だと思います? 木村が尋ねてくる。答えに窮していると、「二軍選手ってプロ野球選手ですか?」と、問いを重ねた。そうか、二軍の選手のことはよく知らないな。きっと野球が大好きで、すごく詳しい人しかそこまで言及しないだろう。

木村昇吾には、“確固たるプロ野球選手”のイメージがあった。

「名前を聞いたら誰でも知ってる……それが僕の思うプロ野球戦手なんです。スタメンで毎試合出て、3割・30本とか打って。ピッチャーだったらローテーションの一角で毎年コンスタントに10勝以上あげるみたいな。二軍にいる選手って“プロ野球選手”って絶対に言われないんですよ、イメージとしてね。一軍にいて、ずっとレギュラーでやってるのがプロ野球選手、僕は自分がそうなれると信じていた。そういうイメージを浮かべてプレーしていました」。

だが横浜では目立った成績を残すことなく広島にトレード。



広島では、まず内外野の複数のポジションでの守備固めと代走に活路を見出し、チームメイトの怪我での離脱をカバーするようなかたちで多くの出場機会を得ることもあった。
木村は、内外野すべてのポジションをこなせるという。

「一軍に残るにはそうせざるを得なかったんです。僕はショート一本でやりたいと思っていました。でも飛び抜けた力がないから、求められるなら応えたほうがいい。サードの守備固めや代走で試合には出るんですが、守備固めをしたくて野球をやってるわけではないんですよね。野球って、打って投げて守って走るもの。でも僕がやっていたのは、走って守る。でもその部分が必要とされるなら、そこを頑張りますよね。少なくとも一軍に入られて出場機会がないことには、実力の見せようがない。そのために頑張ってなんでもしたんです」。



どの守備位置でもいけて、足が速くて、困ったときにはとにかくチームの役に立つ。サッカー日本代表、西野朗監督は5月発表の日本代表メンバーからミッドフィルダーの中島翔哉を落とした際に「ポリバレントがなかったから」と語った。すなわち多価。いろいろなことができるプレーヤー。
そういう意味では木村昇吾は、ポリバレントそのものだった。その特徴には大きな価値があった。そしてその価値は広島カープに欠かせないものになっていた。だが、木村は2015年、FA宣言をする。広島を出ることを決めたのだ。



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