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■美しい夕日写真は“光”を駆使する

撮影/荒谷良一


こちらが、荒谷さんの撮った写真! さすがにプロの仕事なのでこのクオリティは真似できないにしても、それなりのものは撮りたいですよね。
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「これはスマホカメラに限った話じゃないんですが、どうしてデジカメで思ったように夕焼け写真が撮れないかというと、太陽の明るさと、それ以外の建物や人といった被写体の明るさ(暗さ)の差が大きすぎるからなんですね。人間の脳は優秀でその明暗差を補正しているから、全部が見えている気になってるだけなんです」。

なんとなくスマホカメラの限界かなと思っていましたが、撮れなくて当たり前だったんですね。それを踏まえたうえで上手に撮る方法ってあるんでしょうか?

「まず人と夕焼け空を一緒に撮りたい場合は、フラッシュが必須です。スマホに付いているLEDフラッシュはけっこう明るいので、露出を夕焼け空にあわせてフラッシュ撮影すると人も夕焼け空もキレイに写りますよ。これはコンパクトデジカメや一眼カメラでも同じです」。

iPhoneの場合、①被写体を長押ししてAE/AFロック。②そのまま指を画面下に向かってゆっくりなぞることで露出(AE)を下げて空の明るさに合わせる。③フラッシュ撮影、で良いそう。とはいえフラッシュが届く範囲にも限界があります。

「そんなときは人の表情や服装といったディテールをとらえるのはあきらめて、夕焼け空に明るさをあわせて、人物はシルエットとして活かすのがいいでしょう。お子さんに手をあげてもらったり、母子で手をつないでもらったり、ポーズを工夫することでとても良い写真になると思います。また太陽のオレンジ色をライトがわりに夕焼けに照らされた人物を撮るのもよいでしょう」。

なるほど。フラッシュが届かない場合は影絵にしてしまったり、夕映えを狙うと。では、荒谷さんが撮っているような六本木ヒルズ展望台からの風景写真みたいに、街並みと夕焼けを一緒に撮るにはどうすればいいでしょうか?

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■写真を合成する“HDR”とは?

「では近ごろのスマホにも付いているHDRという機能を使いましょう。HDRとはシャッターを押すと自動的に異なる明るさの写真を何枚か撮って、明るい部分も暗い部分もちゃんとディテールをとらえた1枚に合成してくれるという機能です。ただ、明暗差が激しすぎるとやはり『白飛び、黒潰れ』する部分が出てきますし、被写体が激しく動いていたりすると残像が出たりするので、私の場合は空と建物それぞれ適正露出の写真を撮ってから手作業で1枚に合成しています」。

明るさを町にあわせた写真、空にあわせた写真(と普通の写真)を合成すると、印象に近い夕焼け写真となる。撮影/荒谷良一

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おお、やはりプロは違いますね。一応スマホにもHDRに特化したアプリもあるので、いろいろ試してみるとよいかもしれません。ともあれシャッターを何枚も切ってから合成するのは変わりがないので、HDR撮影をする際は手ブレしないようカメラをしっかりホールドするのがポイントだとか。

「でも、HDR機能でも撮りきれないし、手作業で合成するのも大変という場合は、いっそのこと街のディテールはあきらめて夕焼け空をキレイに残す方向に、つまり露出を空にあわせた方がいいかもしれません。あくまで主役は夕焼けですから。そんなとき、人物撮影のときと同じく、煙突や鉄塔、山のシルエットを活かすのもいいですね」。

確かに見せたいものは夕焼け空の美しさですからね。他にも「明暗差をマイルドにしたいなら太陽が雲に隠れる隙を狙う」「太陽の反対側、夕焼け色に染まる街並みを狙う」というテクもあるとか。

「特に言いたいのは、日が落ちてからの夕焼け空も見事だということ。日没後30分くらいはグラデーションが非常に美しくシャッターチャンスが続きます。そもそもですが夕焼け空とは刻一刻と変わり続けるもの。なんだかんだ言っても、いい写真を撮るポイントは日没前後2時間くらいその場で粘ることだったりしますね」。

「待つ」のも大事な撮影ノウハウというわけですね。普段忙しい日々を送っているオッサンも、たまにはひとりで、あるいは恋人や家族と一緒にじっくり夕焼けを楽しむ余裕をもつ。その口実に、夕焼け撮影を使うのも手かもしれませんね。

 

【取材協力】
荒谷良一
http://aratani-photo.com

六本木ヒルズ 東京シティビュー
http://tcv.roppongihills.com/jp/

熊山准=取材・文

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