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■全身全霊アスリートだった男が“兼任”になれるのか


「僕、アホみたいに野球が好きなんです。だから野球は続けたかった。さっきも言ったんですが、社会人野球さんとか独立リーグさんから“兼任コーチで”というオファーはいただきました。でも僕はこれまで、自分の“100%”を選手としてやりきることしかしてきていなかった。戦力外通告後のトライアウトのときにも、まだまだ選手としてできるという実感がありました」。

「そんな自分がコーチを兼任したらどうなるんだろう、と思ったんです。もし“膝が治ってないな”“衰えたな”って自分で思っていたら、迷わず兼任コーチに応じていたと思います。お金も必要ですし、これからも家族と一緒に生きていかなくてはならない。クリケット選手というのは、僕のアスリートとしてのスタンスを変えることなく取り組める対象だと思ったんです」



木村曰く「妻が心配していたのは、僕が別の仕事に就いたときにそれまで通りの熱意と想いを持って取り組めるかということだったみたいです。クリケットってすごく新しい世界だけど、アスリートとしての木村昇吾が求められている。今までのやりがいのままでできるんだったら“面白そうじゃん!” って」。

木村昇吾は今、クリケットという新たな競技にアスリートとしての100%をぶつけることを楽しんでいる。まるでルーキーのようにモチベーションは高い。熱意もやりがいもある。だが、木村は取材中何度か繰り返した。

「娯楽じゃないですから」。



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