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ファイトネスのメニューを実践しながら説明する大山峻護(筆者撮影)


大山は、この時、ビジネスの世界には、メンタル面に課題を抱えている人がたくさんいることをはじめて知った。

そして、自分が持っている格闘技とフィットネスを融合したプログラムが多くのビジネスパーソンにも有効なのではないかと考え、企業に訪問して提案してみようと決意した。

そこからの大山の行動は早かった。持ち前の明るさとメンタルタフネスを武器に、臆することなく、自ら企業に出向いてファイトネスを提案した。企業の担当者にとって、大山の魅力であるエネルギーに満ち溢れた言動は、ファイトネスを導入する前からそれが企業研修に効果的であることを簡単に予想させるものだったのだろう。

2015年6月30日に初めて企業でファイトネスを開催して以降、導入実績は着実に伸びていき、これまで導入した企業は80社を超える。また導入企業は、業種を問わず、知名度の高い大手企業も多い。

打開したのはアスリートとしてのメンタリティ


「現役を退いて、自分に何もないことを悟った時は、さすがに自信を失いました。僕の周りから去って行った人もたくさんいました。その時の悔しさとか寂しさは今でも忘れられないです。今なら去っていった人たちとも笑顔で会えると思いますけど、その当時は、“見てろよ、引退した後のほうが絶対に輝いてやる”って思っていました」

引退した時、今までやってきたことがゼロになってしまったんだと感じた。フィールドが変わって、自分を信じられなくなった。この時に、大山を突き動かしたのは、アスリートとして培ってきたメンタリティだった。

どんなに強い相手にも逃げずに勝負を挑み続けてきたその強靭なメンタリティ。

ヴァンダレイ・シウバには打ちのめされ、ミルコ・クロコップには手も足も出ずに惨敗した。ハイアン・グレイシーには腕をへし折られた。2度にわたって網膜剥離を患い、何度も引退の危機と向き合った。プロ格闘家としての通算成績は33戦14勝19負。

何度負けても強豪に挑戦し続け、さまざまな困難を乗り越えてリングに這い上がり続けてきたその精神力は、セカンドキャリアを開拓する上で、最大の武器になったのだった。

参加者を煽りながら、ミット打ちを受ける大山峻護(筆者撮影)




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