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世代間ギャップなんて、そもそもない


とはいえ、20歳差となると、同年代同士の夫婦にはない悩み、不満もあるだろう。例えば、話が合わないなんてことはないのか?

由那さん「確かに、出会ったころは映画や音楽の話はあまり噛み合いませんでした。でも、無理に合わせなくていいと思うんです。例えば、飲み屋で彼と誰かが昔の音楽の話で盛り上がっていたら、私は無理に入らず違う人と話したりとか。お互いに無理にギャップを埋めようとしていないですね」。

雅之さん「まあ、若い時は確かに『自分の好きなものを理解してほしい』って気持ちもありましたよ。でも、今はまったくない。そこは、オッサンになって成長した点だと思います(笑)。だから、とりあえず話題をふってみて彼女が乗ってくればそれでいいし、興味がなさそうだったら別の話をすればいい。まあ、そんなもんですよ」。

これ以外にも、「世代間ギャップ」にまつわる質問をいくつか投げてみたが、“苦労話”はまったく出てこない。雅之さんいわく「ギャップがあるとか、そもそも全く思ってないんですよね(笑)」とのこと。20歳も離れていれば、「年齢の壁を乗り越えたエピソード」のようなものが聞けるだろうと想像していたが、ふたりには壁そのものがないのである。


年上だからこうあるべき、みたいな気負いもない


普段は歳の差をまるで意識しないというふたり。ひと回り以上も年上のパートナーだからといって、由那さんが雅之さんに「過度な期待」を寄せるようなこともない。あくまで対等に、フラットに向き合っている。

由那さん「年上だからって完璧じゃないんだなっていうのは、一緒に暮らし始めた頃、わりと初期の段階で悟りました(笑)。パジャマをそのへんに脱ぎ散らかすとか、彼に対してイライラすることもけっこうありますからね。まあ、そういうのは年上じゃなくてもイライラしていると思うんですよ」。

一方の雅之さんにも、年長者としての気負いはないようだ。

雅之さん「年上だからこうあるべき、みたいなのは全然ないですね。まあ、強いて挙げるとすれば彼女に対してムキにならないこと、かな。僕から彼女にダメ出しをすることはないけど、彼女からのダメ出しは受け止めて、カチンときてもムキにならないように努めています。彼女の言葉がきついときは『そういう言い方をすると損をするよ』って嗜めるくらいで、まあそこは大人なんですよ、さすがにね」。

由那さん「確かに、それくらい余裕がある人じゃないと続いていないと思います。それは年上だからなのか、彼だからなのか分からないですけど……」。



ただ、雅之さんの「オッサンならではの経験」が活かされるケースはもちろんあるようで、例えばこんなことがあったという。

由那さん「私が苦労している時に一緒に走ってくれるのはありがたいです。特に転職活動のときは、彼の励ましやアドバイスが本当に力になりました」。

雅之さん「といっても、彼女が面接で話そうとしている内容をひと通り聞かせてもらって、面接官にウケが良さそうな部分をピックアップしただけなんですけどね。面接官って大体オッサンなので、そのへんのツボは僕のほうが分かるじゃないですか」。

由那さん「それに、面接に限らず人との関わり方のコツみたいなものだったり、教わることは多いです。例えば、先輩に対しても繕わないで正直に振舞ったほうがかえって信頼されるよとか」。

雅之さん「まあ、彼女にとっての先輩だって、僕よりは年下なんですよ。そう考えたら、彼女だっていくらか気楽にふるまえると思うんですよね」。



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