彼女が80歳になるまでは生きたい
しかし、もちろん心配ごともある。特に、雅之さんの健康面だ。
雅之さん「付き合い始めて3年目くらいに、ふたりで生命保険の契約に行ったんですよ。その帰りに彼女、泣いたんです。彼女が80歳になったとき、僕が生きているのか想像したみたいで。色んな話を聞いているうちに、僕が生きていない状況をリアルに想像しちゃったんですね」。
それまで年齢差を意識せずに暮らしてきたからこそ、由那さんにとってはショックだったようだ。そこで雅之さん、一念発起する。
雅之さん「まあ、現実的に僕が先に逝く可能性は高いわけですが、なるべく長く生きなきゃと思った。由那ちゃんが80歳まで生きるなら、僕は100歳まで。20年くらい長く生きられたらオッケーかなと。彼女をがっかりさせたくないから、健康への意識はけっこう変わったと思います」。
普通のアラフィフが、20代の女性と結婚する。同年代の男性からすれば、夢のような話かもしれない。しかし、杠夫妻にそんな気負いやてらいはない。年上だから、若いから、そういう物差しではなくひとりの人間として互いを尊重している。取材前に抱いていた年の差夫婦に対する先入観を打ち壊す、「普通の夫婦」がそこにはいた。
榎並紀行(やじろべえ)=取材・文