37.5歳、”性”と向き合う(セックスレス編)Vol.3(最終回)
30代後半からのセックスレスは自然なこと。重荷を感じる必要はないが、一方で「セックスには効能もある」とも専門家は言う。無理なくできればいうことはないが……。もしこの年齢で再び性生活をリスタートさせたいとき、どうすればいいのか。夫婦関係に悩む、男たちに読んでほしい、短期連載最終回。
「37.5歳、”性”と向き合う(セックスレス編)」を最初から読む 一度セックスレスに陥った夫婦にとって、“再開”のきっかけをつくるのは難しい。「相手に断られるのでは……」「今さら恥ずかしい」といった心理的なハードルも立ちはだかってくる。
この連載で述べてきたように、30代後半の夫婦が、無理にセックスレスを解消する必要はない。だが、もしも「お互いが望んでいる」のなら、何かアクションを起こしてみるのも悪くない。「いや、妻は望んでいない。以前断られたし」と断言する男性もいるだろうが、はたして本当だろうか。実は男性の「勘違い」であるケースも多いようだ。
夫婦のすれ違いが生むセックスレス。一度断られても気にしない?
臨床心理士の山名裕子氏は、夫婦がセックスレスになる主な原因として「一時的なすれ違い」を挙げる。
「女性が妊娠・子育てに入った際、男性が性的なアクションを起こすと冷たくあしらわれるケースがあります。煙たがられたり、『触らないで』と言われたり。でもそれは相手に魅力を感じなくなったからとは限りません。出産後は一時的にホルモンバランスが変化し、精神的にも余裕がなくなるため、女性は“無意識”に断ってしまいがちなのです」。
しかし、その“無意識な断り”に傷つく男性は多い。「男性の性格的な傾向で、一度断られると引きずって二度と誘わなくなりがちです」と山名氏。結果、すれ違いが生まれる。
「女性は子育てが少しずつ落ち着くと、また性的な欲求を取り戻します。一方、男性はかつて断られているのでアクションはしません。すると、本来はお互いが求めているはずなのに、セックスレスに陥ってしまうことがあるのです」。
山名氏は、まず「男性は、出産直後の女性の言動を気にしすぎないほうがいい」とアドバイスする。それは「特別な期間」であり、女性の本心とは違う場合も多いのだ。
レスの解消法は「セックスを目的にしない」こと
では、そんなすれ違いで“レス”になった夫婦は、どうやって解消すればいいのか。もはや「セックスの雰囲気をつくれない」と思う男性もいるだろう。
「いきなりセックスを目指す必要はありません。まずは少しずつ環境や対応を変えてみること。子供を預けて、ふたりで久々にデートをしたり、奥さんにアクセサリーをプレゼントしたり。行為そのものよりも、『女性として扱うこと』を意識してみます」。
目的をセックスに置くのではなく、いわば「恋人」のような振る舞いを意識する。それを繰り返す中で、「お互いがセックスしたくなるムードになったらすればいい」と山名氏は言う。
実際にあったケースとして、夫婦でマッサージをしたり、パジャマを変えてみたり。ちょっとした行いの変化から少しずつふたりのムードが高まり、レスを解消した夫婦もいるようだ。
「環境や対応を変える中で、女性はより女性らしい一面を出すようになります。これは“拡張自我”や“フィーリングッド効果”と言われますが、そのような形で時間をかけて、徐々に心理的なムードを作ることが大切です」。
40代に向けて、夫婦の性生活で大切なことは何か
一方、レスの解消としてセックスを目的に据えるのはリスキー。「プレッシャーがかかり、心因性のEDになるケースもある」とのこと。むしろ逆効果だ。
「行為においても、『きちんと前戯をしなければ』『相手を満足させなければ』と、気負ってしまう男性が多いです。これも最初から完璧を求めないことが重要。気負うことは重圧を強くし、一歩目を踏み出しにくくしますから」。
ちなみに、女性側はセックスを望んでいるが、男性はEDなどでできないケースもある。この場合は、「うやむやにして避けるより、きちんと説明してあげたほうが良いのでは」と山名氏。女性は「レスの理由を知って安心するケースもある」とのことで、不安を解消してあげるほうがいいという。
セックスレスを無理に解消する必要はない。それが大前提であることは、この連載で説明した。そのうえで、セックスレスの解消を考える夫婦に対して、山名氏はこうアドバイスする。
「決してセックスに至らなくても、愛撫してあげたり、あるいは女性的に扱ったりすることで満足するケースもあります。女性は行為がないことよりも、『女性として見てくれないこと・扱ってくれないこと』に不安を感じる場合が多いんですね。ですから、大げさに考えすぎず、言動や環境を少しずつ工夫するだけでも前進できるのではないでしょうか」。
3回にわたって考えてきた「40代からの夫婦の性生活」。共通するのは、男性が「考えすぎ」「気負いすぎ」ということかもしれない。無理をする必要はないし、かえって関係を気まずくする可能性もある。力を抜いて、向き合ってみること。それがポイントといえそうだ。
有井太郎=取材・文
【Profile】 山名裕子 1986年5月7日、静岡県生まれ。臨床心理士。「やまな mental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス、恋愛などあらゆる悩みへのカウンセリングを行っている。まだカウンセリングに対する偏見の多い日本で、その大切さを伝えるためにメディア出演や講演会活動を行う。日本テレビ「ナカイの窓」では心理分析集団「ココロジスト」を務める。新書に『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)がある。