不朽の名作時計と称えられる「レベルソ」が2021年で誕生90周年を迎えた。角形時計の金字塔であるとともに、反転式ケースという不変の独創性は時代を超越して支持される。
だがその歴史は自らを越えようとさらなる完成度を目指し、革新を続けてきた結果にすぎない。そのあり方に男は惚れる。
不変と革新の「レベルソ」90年史
その存在を語るうえで、ポロとの関係は欠かせないだろう。90年前、競技中に腕に着けていても壊れないタフネスへの挑戦が、稀代の名作「レベルソ」を生み出したのだ。
人馬が一体となって鮮やかな芝の競技場を駆け巡るポロは高貴な美しさが漂う。だが競技はいたってハードで、球やマレットが当たれば腕時計などひとたまりもない。そこで考案されたのが、ケース本体を反転させ、ガラス面を保護するというユニークな構造だ。
かくして1931年に誕生した「レベルソ」だが、魅力は決してスポーツシーンだけにとどまらなかった。
躍動感ある機能美に加え、その先進性に相応しく、当時の最先端であるアールデコ様式を纏った。ケースの縦横比率は黄金比に基づき、直線のフォルムを強調する上下のゴドロン模様、三角形の優美なラグを備える。
さらに当時としては珍しいカラーダイヤルをオーダーメイドで揃え、ケースバックにはエングレービングやエナメル装飾など伝統技法を駆使したパーソナライゼーションが施され、個性を彩るキャンバスになったのである。
戦後の嗜好の変化やクオーツウォッチの台頭によって一時は休止状態にあったものの、「レベルソ」は’75年に公式に復活を遂げた。
’85年には、いよいよブランド初の機械加工による反転式ケースの自社生産を導入。それまでの専用設計の角型ムーブメントに加え、完全なマニュファクチュール体制を敷いた「レベルソ」は、誕生60周年を経て、次なる魅力の扉を開けた。その契機になったのが’94年に登場した「レベルソ・デュオ」だ。
ケース表裏でふたつの時間帯を表示し、これまでの装飾による第2の顔から、機能というもうひとつの顔を持ったのである。それは独自のマニュファクチュール技術を誇るブランドの本領発揮といえるだろう。
それは「レベルソ」という1モデルにとどまらず、さらにクオーツ危機にさらされた機械式時計の復権を宣言したのである。
以降、第2時間帯、パワーリザーブ、トゥールビヨン、ミニッツリピーターなど超絶な複雑機構までも搭載し、角形時計の概念をはるかに超える、時計界に君臨する唯一無二の存在だ。
90年の歴史において「レベルソ」は、常に時代の息吹や先進技術を取り入れ、進化を続けてきた。それでも角形の反転式ケースというアイデンティティは決して崩さない。
その気概こそ男の腕を飾るに相応しいのだ。
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