OCEANS

SHARE

「JINS PARK 前橋」について説明する田中
オープンからおよそ半年。コロナ禍でも想定以上に客足は伸びているという。
前橋市に続々と新スポットを生み出すことで、市民だけでなく県内外からの注目も高まってきた。建築ファンやアートファンをターゲットに、白井屋ホテルに宿泊し、JINS PARK 前橋に立ち寄るツアーを企画する旅行会社も出てきた。

店舗はブランドのストーリーを伝える存在に

JINS PARKを皮切りに、全国各地で同様の“地域コミュニティの創出”を目指した店舗の展開も進めている。
2021年9月には愛知県の「JINSイオンモール岡崎店」をリニューアルオープン。JINS店舗で日本一の面積を有する120坪の店内には、1500冊もの書籍と可動式のコミュニティスペースを設置した。田中は「各都道府県で代表的なお店をつくっていければ」と意気込む。
こうした地域密着型の店舗は、ブランドのストーリーを顧客に伝える役割も担う。ブランドのファンになってもらうには、世界観や価値観に共感し、コミュニティの一員になりたいと思ってもらう必要があるからだ。
「JINSはまだまだ、ブランドの本来の姿を伝えきれていないと思います。ただ『メガネを安く売っているお店』というのではなく、『人々の生き方そのものを豊かに広げ、これまでにない体験へと導きたい』という経営理念にも通じる思いを、もっとシャープに表現していく必要があると考えています」

企業と地域社会のつながりを構築したい

田中は、民間企業が地域貢献に取り組むメリットについて「思いのままに、思う存分クリエイティビティを発揮させられること」と語る。
「税金は所得や資産の再配分という役割が基本的な使い道だと思います。デザインという付加価値に対してはあまり税金(補助金)を使えない。そういう分野こそ民間の強みが出せる」
地域での活動において、参考にしている事例は「ない」ときっぱり。「やはり、起業家なので人真似ではなくてオリジナリティを追求したいのです。前橋への取り組みも、もし前橋の土地の値段が最下位ではなかったら手をつけなかったかもしれません。起業家精神に火をつけられたのだと思いますね」

今後は、企業と地域社会のつながりを新しく構築していきたいという。
「これまでは、企業の成長と地域の成長は分断されていました。雇用を生み出すという面はあっても、企業の利益が地域に直接的な影響を及ぼすことはあまりありませんでした。JINSが地域にどう貢献していけるのか、追求していきたいと思っています」
 
堤美佳子=文 田中友梨=取材・編集 杉能信介=撮影 記事提供=Forbes JAPAN


SHARE

次の記事を読み込んでいます。