百貨店の「余剰在庫」に疑問
ニューメイクラボのオープン後、第一弾プロジェクトとなったのが、イタリアのラグジュアリーブランド、ミッソーニの商品のアップサイクル。セールやアウトレットに流す前の商品の提供を受けた。
このプロジェクトに参加したデザイナーの一人、水野夢子(MIZU代表)は、ポンチョ・ブラウス・チューブトップ・ドレスの4アイテムに分解できる洋服を制作した。
ミッソーニの創始者、故オッタヴィオ・ミッソーニの話から着想を得て、フィレンツェを象徴するサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂からインスピレーションを得たデザインに仕上げたという。
水野は大阪文化服装学院卒業後、百貨店に出店するアパレルブランドでチーフデザイナーとして勤務。3年後、フリーデザイナーとして独立し、ファッション系の専門学校5校でデザイン講師も務めている。
彼女がニューメイクに関心を持った背景には、百貨店時代に多くの余剰在庫を目にして「同じデザインの服を大量につくって消費するというのは、いまの時代に合っていないのではないか」と感じた“原体験”がある。
「ファミリーセール(関係者向けに行われる値引きセール)を開催していることからも分かると思いますが、百貨店では毎シーズン7割くらいのアパレル商品が売れ残ります。とはいえ、“在庫ゼロ”では店舗として成り立たないので、消化率80〜90%が目標となっています。つまり、始めから余剰在庫が出る計算なんですね」
こうした課題を解決したいと、独立して受注生産のブランドを起業。リメイクへの関心も高まり、個人的に作品を手掛けるようにもなった。「ただの“お直し”ではなく、新しい価値を持たせるためのリメイクは、正直、通常の洋服の制作よりも難易度が高いと思います。ただ、新しいジャンルに挑戦することができるので、幅が広がります」
未来を担うデザイナーが生まれる場所に
第二弾はスポーツブランドのコールマンのプロジェクトを実施し、約30人が参加。今後も様々なジャンルのブランドと協業し、制作を通じて若手デザイナーの育成にもつなげる。
細川は「ラボはファッションの聖地・原宿に立地するので、日本のアパレル業界の未来を担うデザイナーたちが生まれる場所になることを願っています。そして、コロナ禍で元気のない街全体にも、刺激を与えられる存在になればと思います」と期待する。
水野も「私は受注生産のブランドをやっているので、一人のデザイナーとして、新たな仕事につながるような接点にできればと思っています」と、夢を語った。
田中友梨=文
記事提供=Forbes JAPAN