「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……40代、リーダー世代。今までになかった悩みやモヤモヤが増えてきたけれど、反比例するかのように相談できる相手が減ってきた……。
そんなオーシャンズ世代の仕事の悩みやモヤモヤに、組織と人事の専門家が答えます。
本日の相談者:44歳、メーカー勤務「管理職になって10人の部下を指導する立場になり、自己研鑽の時間がほとんどなくなってしまいました。アウトプットばかりでインプットがないので、自分が枯渇していく気がして怖いです。そのうち部下から浅はかさを指摘されるのではと、ドキドキしています」。
| アドバイスしてくれるのは…… そわっち(曽和利光さん)1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。 |
「自己研鑽」とは何を指しているか
人が成長していくためには、まずは仕事を通じて経験を積まなくてはなりません。
その経験を「なぜうまくいったのか/いかなかったのか」等と内省して、そこから改善ポイントや応用できそうなノウハウなどの概念化を行う。そして、それをほかの仕事でも実践して再び新しい経験を積んでいく。
こういうサイクルを繰り返すことで、人は仕事から学んで成長していくのだと、「経験学習理論」(デイビット・コルブ)は主張しています。
私たちの実感にも合う話です。今回のモヤモヤでは「自己研鑽の時間がとれない」とのことですが、それは「経験」なのか、「内省」「概念」「実践」なのか。それにより対策は違いそうです。
「インプット」というと「勉強」のイメージ
一般的に「インプット」というと本を読んだり、研修を受けたり、最近だとYouTubeなどの動画を見たりすることで、何らかの知識を頭に入れていく「勉強」的なイメージがあります。
知識とは上述の「経験学習理論」で言えば、まさに「概念」です。もし、これを「自己研鑽」として、「不足している」と思っているのであれば、私はそこまで悩む必要はないのではないかと思います。
若い新人などであれば多くの経験を積めず、自ら知識を生み出せないため、知識インプットが必要ですが、管理職にもなれば日々の仕事で十分経験が積めているはずで、そこから知識を生み出すことができると思うからです。
既に自分の中に知識はあるはず
もちろん、管理職でも知識インプットはあればあるほどよいでしょう。しかし、その前に、これまで大量に経験したことを消化しているかということです。
私がこれまで人事として接してきた無数の人たちの中に、良質な経験を多量に積んできているのに、知識やノウハウが積み上がっていない人がいました。
例えば営業としてトップの成績を長年上げてきたのに、「どうすれば売れるのか」という知識を他人に説明することができないのです。
しかし、彼らは実際に「売れる」わけですから潜在的な暗黙知としては「売り方」についての知識を持っているわけです。それを健在的な形式知で表現することができないだけなのです。
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