2020年8月のヤリスクロス発売から約1年後となる2021年9月14日、トヨタは「カローラクロス」を日本に投入した。こちらはヤリスクロスの1つ上となるCセグメントのSUVだ。
これにより、トヨタには下から「ライズ」「ヤリスクロス」「カローラクロス」というコンパクトSUVが揃うことになる。また、CセグメントSUVには、2016年発売の「C-HR」もある。
振り返れば、2016年にC-HR、2019年にライズ、2020年にヤリスクロス、2021年にカローラクロスと、トヨタはコンパクトSUVを毎年、投入している。しかも、それらのキャラクターはしっかりと差別化されており、購入時に悩むことはない。
ラギッドで若々しいライズ、シティ派でキビキビ走るヤリスクロス、オールマイティで実用性に優れるカローラクロスといった具合だ。
さらにトヨタは、その上にも「RAV4」「ハリアー」「ハイラックス」「ランドクルーザープラド」「ランドクルーザー」とSUVラインナップを用意する。価格帯の上から下までキャラクターも硬軟も揃え、まさに水も漏らさぬ布陣だ。「SUVが欲しい人を1人も逃さぬ!」というような意思さえも感じる。
うならされるトヨタの“地力の強さ”
もちろん、このような豊富なラインナップは、地力に優れたトヨタだからこそできる力技だ。トヨタ以外のメーカーも複数のSUVをラインナップするが、これほど充実していない。
ヨーロッパブランドもサイズ違いでいくつものSUVを揃えているが、基本的なキャラクターはすべて同じで、金太郎あめ的にサイズと価格にランクが用意されているだけだ。トヨタのようにバラエティ豊かなキャラクターを揃えるメーカーはほぼない。
しかも、トヨタは中国市場向けに「クラウン」のSUVまで販売している。もしも、日本市場にクラウンSUVが投入されれば、ランドクルーザーとハリアーの間を埋めることになるだろう。ミドルクラスより上のSUVラインナップも、充実するのだ。きっと、これも高い人気を集めることだろう。
大成功のヤリスクロスが果たす役割は、「SUVが欲しい人」を1人も逃さないためのラインナップの1台であると同時に、トヨタのSUVラインナップの中で上級移行させる戦略的な1台でもあるのだ。
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大ヒット「ヤリスクロス」のディテールを見る(写真:トヨタ自動車)
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鈴木 ケンイチ:モータージャーナリスト
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記事提供:東洋経済ONLINE