ナナミカがボーダーレスに使える日常着を提案し続けて20年弱。長く支持されている理由は、本質に基づいた服作りにほかならない。「うわべだけのギミックに頼らないようにしています」と本間さんは続ける。
「男のカジュアルって、モードを別にすれば、スポーツ、ワーク、ミリタリーくらいしかベースがないんですよ。僕は服の世界で過ごしてもう40年。その半分はマリンウェアやアウトドアウェアの企画をして、実際に自分で着用し研究を重ねてきたわけです。
だから、洋服のディテールにはどんな意味があるのか。出自や機能を理解したうえで服に落とし込みます。ディテールのデザインだけを安易に使って見た目が格好いい新作に変換するという作業は絶対にやりません。結果、 20年前の服をデザイン画で見たら、今と同じじゃん!と言われますけど(笑)」。
ただ、我々はそのブレない姿勢こそが、まさにナナミカだと考える。
「宇宙に行くわけでも、富士山のてっぺんで仕事をするわけでもありません。だから、“ジャストスペック”というのを心がけています。
アイテムに機能を“正しく”落とし込んでいくことが大事。そして、エモーションを満足させるデザインにする」。
スポーツウェアの持つ普遍的な価値を日常着に収斂させる。この創業より変わらない姿勢が、老若男女を境界線なく魅了する神髄と見た。
芹澤信次=写真(人物) CBK=写真(取材) 菊池陽之介=スタイリング 竹井 温(&’s management)=ヘアメイク 髙村将司=文