パリコレクションブランドだけれど、どこか親しみがある。
オーシャンズ世代のデザイナー、相澤陽介さんが手掛けるホワイトマウンテニアリングといえば、多くの人がそんな印象を抱いていることだろう。
「どちらかといえば、究極の定番を作りたいタイプ」と自らを評するとおり、デザインされたなかにも普遍的な何かを感じ取れる服作りが特徴。そして、もう一点。相澤さん自身が、驚くほど多くのプロジェクトに参画し、いたるところでその名を見かけることも、親しみやすさの所以と思われる。
オーシャンズ12月号のテーマである「ボーダーレスな服」に直球でピタリとハマるブランドだと思うが、ここ最近のトピックとしてまず注目したいのが、昨年10年ぶりに復活を遂げたライン「BLK」だ。
現代のファンクションを十分に備えてアウトドアの要素をキープしながら、すべてをブラックで統一することにより、あらゆる日常に溶け込んでいく。まさに都会とフィールドのボーダーを飛び越えた服作り。
相澤さんが、自分にとって現実的な洋服とは何かを考えた結果、たどりついたのがBLKの復活なのだという。
「黒い服を着る機会が、本当に増えました。北海道コンサドーレ札幌の取締役や、母校・多摩美術大学の客員教授、あるいは、食品会社のパッケージデザインを手掛けるなど、いわゆるおカタい場への出席頻度が高まったのが主な理由。
いくらデザイナーとはいえ、人を不快にさせないためにも、折り目正しい服装で臨みたいわけです。都会のアウトドアを標榜していても、さすがにマウンテンパーカでは出席できませんからね(笑)」。
後編に続く
芹澤信次=写真(人物) Taichi=写真(取材) 菊池陽之介=スタイリング 竹井 温(&’s management)=ヘアメイク 髙村将司=文