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電気でも、味わいはしっかり500

「500という文化財をこの先の未来まで残すことを考えれば、日常使いのハードルを下げるEV化は必須だと思ったんです。しかもイタリアで既にやっている人がいましたし」。

“やっている人”とは、ラポ・エルカン氏。フィアットの創始者ジャンニ・アニエッリ氏の孫であり、ファッションブランド「イタリア・インディペンデント」の会長だ。

博物館でプロデュースするヌオーバのEV「500ev」も、エルカン氏と同じEV化ユニットを使い、トリノのカロッツェリアで仕上げている。ガソリン車同様ボディはもちろん、ライト類や窓のふちのゴムまでピッカピカだ。

フロントグリルのフィアットのロゴをパカッと開けると充電口がある。自宅に簡単に備えられ、商業施設等にもある200V充電器で充電する。

航続可能距離は約100km。日本規格の急速充電器には対応していないので遠出は難しいかもしれない。まあ、こんな小さな500では、例えガソリン車でも遠出しようと思う人は少ないだろうけど。

遠出には別の車を使い、普段の買い物や週末の楽しみとして500evと戯れる。そんな使い方がちょうどいい。

そして、電気自動車になったとはいえ500、独特の戯れる楽しさは十分にある。



まず小さい500evはタイヤハウスが室内空間へ干渉しているので、ペダルが中央に寄っている。だからいつもの感覚でアクセルペダルを踏もうとすると、ブレーキペダルを踏んづけることになる。

車内は狭い。左ハンドル車なのに、駐車場の右ハンドル車用発券機から駐車券を取れてしまうほどだ。そしてハンドルは重い。

メーターはベース車と同じ形状で、表示内容は電気自動車専用に。元々のインパネにはトグルスイッチが並ぶが、500evでは丸いプッシュボタンになるなど、現代にアップデートされたデザインに。

一方で、パリパリパリッという2気筒のエンジン音はしないから、ヌオーバ500なのに走行中に車内の全員と会話がフツーにできるのに、4人乗っても坂道をグイグイ登れる。

ただし非力な2気筒エンジン用のブレーキのままだと、元気なモーターの500evを止めるには、しっかりと踏んでやらないとならないけれど、キビキビ反応するアクセルと500そのままのハンドリングは最高に楽しい。

試乗させてもらった500evはリモコンキーでドアの開閉が可能。ほかにも後ろまでキャンバストップにしたり、逆にクローズドルーフにしたり。あるいは右ハンドル化、オーディオ等々にも対応。車両本体価格は660万円〜。

そして何より気分が乗るのは、この唯一無二のスタイル。都心でも地方でも注目間違いなしの500をEVで走らせる気持ち良さったら無いのだ。

そんな500evもいいけど、博物館クオリティでフルレストアしているエンジンのヌオーバ500も捨てがたい。

しかしガソリン車はフルレストアしていても、それは約50年前の状態に戻るということ。万が一道中で止まってしまってもイタリア人のように陽気に笑い飛ばせるならいいが、そうではない人には動力に不安のない500evがオススメ。

さあ、あなたならどっちの“里親”になる?

[問い合わせ]
チンクエチェント博物館
www.museo500.com

籠島康弘=文

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