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2021.10.28

博物館が提案する「電気のチンクエチェント」に込められた深い愛に共感!

フィアット 500ev
キレイにレストアされているので、ボディに傷や凹みもなし。内装もモール類も新車のようにキレイだ。ヘッドライトはLED。

ルパン三世もこれだったら泥棒稼業がはかどったかもしれない。

音もなく近づいてきた見知った車は、フィアットの2代目500(ヌオーバ・チンクエチェント)、その電気自動車バージョンの「500ev」だ。

けれど、単にヌオーバ500のエンジンを外してモーターを突っ込んだヤツなんかじゃなかった。
 

文化財としての500を未来に残したい

愛知県名古屋市にあるチンクエチェント博物館。ヌオーバ500の通称プリマ・セーリエ(イタリア語で「最初期シリーズ」の意味)から、大きな丸い目が少し飛び出ているUSA仕様、屋根を取っ払ってビーチ仕様にしたギア・ジョリーなど、珍しいヌオーバ500を所蔵する私設の博物館だ。

こちらがチンクエチェント博物館のホームページ。歴史的価値のある500を多く保存している。

ヌオーバ500が好きすぎて、同博物館を2001年に設立したのが伊藤精朗さん。

当時はまだ現行型500が発表されてなかったこともあり、伊藤さんは「500はイタリアの”動くモダンアート”と言っていいような価値ある存在。世の中にこんな車があるんだと知ってもらいたかった」と同博物館を立ち上げたという。

バッテリーをフロントに搭載、リアにモーターを載せて後輪を動かすので、ベース車であるヌオーバ500と同じRR(リアエンジン・リアドライブ)ということになる。

やがて現行型が2008年に日本で販売され、大ヒットすると、次第にヌオーバ500のほうも有名になってきた。ところが1975年に生産が終了したヌオーバ500は、現地イタリアでもさすがに台数がどんどん減ってきているという。

「イギリス人なら『この動くアートを文化財として残そう!』とか保存活動をやるかも知れませんが、イタリア人はあんまりそんなこと気にしない(笑)。だったら自分がやろうと」。

しっかりレストアして、この車に興味を持ってくれた日本の人々に届けようと考えたのだ。「気持ちとしては、大事なペットの里親探しみたいなものですよ(笑)」。

ベース車のトランスミッションを使用するため、シフトレバーがある。といっても500evで使用するのは3速と4速のみ。3速のまま普通に走れる。AT免許でもOK。

もちろん博物館としてやる以上、レストアの仕上がりは博物館クオリティにこだわった。「国内での数は少ないとはいえ、あれだけ売れた車だし、まだ現役で走っている車もあるので、イタリアでは新品パーツが手に入ります」という。

昨年夏からガソリン車の販売が始まり、1年間で25台ほど“里親”が見つかった。そして伊藤さんは、ヌオーバ500の電気自動車化プロジェクトもスタートさせたのだ。

後退したい場合は、シフトレバーを使ってバックに入れる。バックギアを入れるのではなくモーターを反転させるだけなので、カスタムでバックへの切り替えをポチっとできるボタン仕様にすることも可能だ。


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