なんだか“大野生”が巣食う島に、人がお邪魔をしているようだ。
目の前で次々と繰り広げられる光景。それは過去に訪れたハワイでもタヒチでも見られなかったもの。
ブラジルのジャングルや、生物多様性の宝庫コスタリカに行けば、似たような光景に出会えるのかな。そう思えるほどの生命力に、西表島は溢れていた。
大自然と言うより“大野生”。世界が認めた島
カヌーでゆっくり進む勇壮なマングローブの森は神秘的で、ビーチでは数多のヤドカリが歩き、森を行けば山に生きる昆虫たちが足元にやってくる。
サンゴ礁の海でシュノーケリングをすれば色とりどりの熱帯魚がそこかしこで泳ぎ、夜になって夜行性の生き物や星空を楽しむツアーに参加すれば、道路をヤシガニが歩き、イノシシが横切り、電線にはフクロウがとまる。
そしてガイドさんは「ハブもその辺にいますので」とのたまった。
今回の滞在はわずかに2泊。それでも数多くの“野生”が目の前にあらわれた。剥き出しの西表島の“日常”は、圧倒されるほどにすごかった。
沖縄県の八重山諸島にある西表島は、東京から2000km、沖縄本島からも約400km離れた場所にある。むしろ台湾のほうが近い、いわば日本の端にある島だ。
人口はわずか2400人。人間活動による影響は少なく、そのため大いなる“野生”が今も息づいている。
この7月には、奄美大島、徳之島、沖縄島北部とともに世界自然遺産に登録。その背景にも豊かな生物多様性があった。
地球上のほかの地域では見られない、西表島だから確認できる固有種、絶滅危惧種が生息・生育しているのだ。
最たる象徴がイリオモテヤマネコ。現在の個体数は100頭ほどとされ、かつ減少傾向にある西表島の固有種だ。
さらに周囲約130kmの島の9割が亜熱帯の原生林で覆われ、マングローブの原生林は国内最大という、まさしく大自然ならぬ“大野生”が残る場所なのである。
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