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2.「サブマリーナー」
ダイバーズウォッチの原点

1953年に登場したもうひとつのプロフェッショナルウォッチが、“ダイバーズウォッチの原点”と呼び声の高い「サブマリーナー」である。
ロレックス サブマリーナー
まだリュウズガードの装備がなく、よりシンプルな佇まいの初代サブマリーナー。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
当時のサブマリーナーは、‪水深100m(330 フィート)までの防水性能(1954 年には水深200mまでに向上)を備え、目盛り入り回転ベゼルで潜水時間が表示できるダイバーズウォッチであり、ロレックスの防水腕時計が持つ可能性を明確に具現化した。
先駆的なダイバーズウォッチが多大な影響を与えたのは、腕時計の世界だけではなかった。
1962年の映画『007 ドクター・ノオ』の劇中でショーン・コネリーがタキシードに合わせて着用したことをきっかけに、サブマリーナーはドレスコードさえも変えてしまう。
本質的なデザインは変わらず、進化し続けているサブマリーナーは、オイスターウォッチの象徴、「究極の機能美」を体現する不世出の傑作として、誕生から半世紀以上たった今も愛され続けている。
 

3.「GMTマスター」
GMTウォッチの先駆け

第二次世界大戦後の1950年代、アメリカを中心に世界情勢は大きく変わり、ジェット機での大陸間旅行が一般にも浸透し始めていた。
ロレックスの第3のプロフェッショナルウォッチとして、1955年に発表された「GMTマスター」はまさしく時代の申し子であったのだ。
当時、航空時計の分野ではすでにいくつかの傑作が登場していたが、これらのパイロットウォッチと一線を画したアイデアを用いたGMTマスターは、センセーショナルなデビューを果たす。
ロレックス GMTマスター
1955年、初代GMTマスター。プレキシガラス製のベゼルに注目。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
ロレックスのGMTマスターに個性を与えたのは、‪ ひと目でそれとわかる特徴的な‪24 時間目盛り入りの回転ベゼルと‪24 時間針である。
ホームタイムは24時間針を回転ベゼルの目盛りに合わせて読み取り、通常の時針で別のタイムゾーンの時刻を読み取ることができる、デュアルタイム表示機能を備えていた。
その高い信頼性により、GMTマスターは“パンナム”の愛称で知られる‪アメリカの航空会社パン・アメリカン航空の公式時計に採用された。この事例からもわかるように、ロレックス初のパイロットウォッチは、実用性を重視したシンプルな設計に徹底することで差別化に成功したのである。
それから数年後、GMTマスターは世界中の著名人やエリートにも愛用され、パイロットウォッチの枠を超えたステータスシンボルとしての地位を確立する。
1982年に登場した、操作性が格段に向上したGMTマスター Ⅱ。© Rolex/Jean-Daniel Meyer
1982年には、リュウズで時針だけを操作できる「GMTマスター Ⅱ」が登場し、伝説の数々は現在まで受け継がれている。
 
その後もロレックスは、1956年に磁場への耐性を備えた「ミルガウス」、‪1960年には、‪深海潜水艇トリエステ号の外側に取り付けられた状態で‪海洋最深地点であるマリアナ海溝の水深 1万916mまで‪潜航し、‪巨大な圧力に耐えた試作モデル「ディープシー スペシャル」を開発するなど、精力的にプロフェッショナルウォッチを展開していく。
そして1963年には、カーレースとの深い関わりを持つ、誰もが知るクロノグラフの金字塔「コスモグラフ デイトナ」が登場する。
次回は、コスモグラフ デイトナの華麗なる歴史を探っていきたい。
 
戸叶庸之=文


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