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現在、国内で消費されているメンマのほとんどは、中国産の麻竹(マタケ)を使ったもの。対して国産メンマのシェアはわずか1%にすぎない。
延岡メンマに使用している竹は、九州内でもっとも多い孟宗竹(モウソウチク)。タケノコのシーズンが終わる5月頃に1〜2メートルほどに育った幼竹(ヨウチク)を収穫し、カットしたうえで煮る。さらに発酵させ乾燥したところで再度お湯で戻し、味付けして完成する。
メンマの原料となる幼竹。人の背丈ほどに育った竹の先端だけ切ったものを使う(写真提供:LOCAL BAMBOO株式会社)
延岡メンマを商品化するうえで最初にぶつかった壁が幼竹の確保だった。商流に乗せるためにはある程度まとまった幼竹の量が必要だったが、実家の山だけはこと足りない。
そこでJA延岡のタケノコ部会に相談を持ちかけたところ、処分に困っていた規格外の幼竹を安価で譲ってもらえることに。互いの利害関係が一致したことで、一気に道が開けた。
「タケノコの生産にしても国産メンマにしても高齢者の割合が高く、平均年齢が70代。当時まだ20代でひよっこ同然だった自分はつい及び腰になり、収穫から加工まで全部1人でこなしてまずは実績を積もうとがむしゃらになっていました。
でも、放置竹林の解決はいろんな方々を巻き込んでこそ。地元のみそや伝統野菜を使うのもそんな意図からです」。
メンマの加工は近隣の就労支援施設に、仕上げの味付けとパッケージングはタケマンに委託するOEM方式を採ることで、自身は営業活動に専念できる体制を整えた。

可能性は無限大「延岡メンマ」2つの意義

商品のクオリティには自信があっただけに売り方には頭を悩ませた。地元の小売店に並べるには価格競争を余儀なくされる。それよりは社会性やストーリーをきちんと明示することでブランドを確立し、ITを駆使して県外の消費者に価値をアピールした方が正解ではないのか。
パッケージを東京在住時に知り合ったデザイナーに依頼し、キャッチコピーを「あなたの食欲が森を育てます」としたのも全国展開を意識したゆえだ。
いざネット通販のスタートまで漕ぎ着けると、江原さんの読みはピタリと当たる。ローカルではなく、圧倒的に都市部の人間が反応してくれたのだ。
「ほとんどのオーダーが東京をはじめとした都市部からの注文です。しかも女性が多くて、放置竹林どころかメンマの原料が竹であることも初めて知ったという反応をたくさんいただきました」。
現在、延岡メンマが江原さんの会社の収益に占める割合は2割程度。いずれかは自社工場を設け収益の大きな柱にまで成長させたいと考えているが、利権化したり市場を独占する気はない。それどころか本意はむしろその逆だ。
「シェア1%の中で争っても意味がない。いろんな地方の方々と問題を共有し、あくまでオープンイノベーションでやっていかないと」。
自分のやり方を全国の人に真似てもらうことでご当地メンマが増え、放置竹林の解決に一役買えれば本望だと語る。地方創生と環境保全の両義性を宿したメンマの可能性は無限大だ。
 
宗像 幸彦:ライター・編集者
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記事提供:東洋経済ONLINE


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