力強く走り出し、ぐんぐんと加速している
そしてこの9月に満を持して登場するのが“土に還るデニム”。ボタンが取り外し可能な「サーキュラー(循環型)デニム」である。
ネジのように回せばポロリと外れる。Gジャンやデニムのボタンは金属製が一般的。ごみに出すにしてもリサイクルするにしても、ボタンを外すのがひと苦労であった。この手間が省けることで、分別への意識が高まるという仕掛けなのだ。
ディーゼルの原点でありアイデンティティでもあるデニム。サステイナブルの視点からも、デニムというアイテムには多くの可能性が秘められていると感じる。
さて、ここまでは過去を振り返った。ではネクストチャプターは? 直近では’22年春夏コレクションより登場する「ディーゼル ライブラリー」に注目したい。
ファッション業界内では知られているが、ディーゼルは定番商品を持たないブランドである。デニムですら継続して作られるモデルは存在しない。
この方針を大きく変更したのが「ディーゼル ライブラリー」なのだ。アイテムはすべてデニム生地を使用しており、その50%がパーマネントコレクション、つまり定番商品となる。
クリエイティブ・ディレクターのグレン・マーティンスいわく「デニムといえど単なるクラシックではありません。トレンドを超えるマスターピースを提案したい」とのこと。
その言葉のとおりジェンダーレスなデザインアプローチを採用し、素材、加工、パーツなどのあらゆる側面においてひときわサステイナブルに配慮。その製造の詳細は各アイテムのタグに付くQRコードから確認できるという。
今後のデニムアイテム製作の過程を大きく転換し、メンズとウィメンズの境界線を超えるコレクションとなるであろう「ディーゼル ライブラリー」に、大きな期待を寄せたい。
こうしてたどると、ディーゼルにおけるサステイナブルへの挑戦は、始まったばかりと表現するのが正確なところだろう。だが力強く走り出し、そのスピードはぐんぐんと加速している。
おそらく今このときのサステイナブルに絶対の正解はない。正解があるとすれば、言葉にして、実行して、間違いは修正すること。つまりディーゼルのように、動き始めて動き続けることなのだと思う。
DIESEL ディーゼル
創業年:1978年
創始者:レンツォ・ロッソ
本社所在地:イタリア・ブレガンツェ
事業展開:世界80カ国以上
Sustainable Keywords
・代替的かつ責任ある製品やパッケージの製造
・気候変動に対する改善的なアクションを推進
・全社員の個性を讃え安全な就業環境を実現
・サプライチェーンにおける社会・環境水準の向上
(※1)サプライチェーン
製品の原料や素材の調達、製造、在庫管理、流通、販売、消費までの一連の流れのこと。このサプライチェーンのマネジメントが、製造業におけるサステイナブルの鍵といわれている。
鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文