オーシャンズ読者にとっては馴染み深いブランドであろうディーゼル。
現在ではデニムをはじめとしたカジュアルウェアからインテリアまであらゆるコレクションを手掛け、カフェやアートギャラリーなども運営するこのブランドを、改めてサステイナブルな視点から捉えてみようと思う。
創始者レンツォ・ロッソの「責任ある生き方」宣言
ディーゼルのサステイナブルに関する戦略は、2020年の1月に発表された「責任ある生き方(FOR RESPONSIBLE LIVING)」というひとつの宣言から始まった。当時、創始者のレンツォ・ロッソはこうコメントしている。
「現在私たちは新しく、いまだかつてないほど大きく重要な課題に直面しています。ファッション業界が社会、経済、環境に与える影響について認識が高まるなか、課題に全力で立ち向かう用意がディーゼルにはできています」。
立ち向かうべき課題とは何か。それはディーゼルが考える「責任ある生き方」を実現するための、“4本の柱”に集約される。
製品の素材やパッケージを見直す「代替案の模索」。温室効果ガス排出の最小化など気候変動に対するアクションを表す「地球のために戦う」。社員の権利や多様性を尊重し就業環境の安全を促進する「個性を讃える」。そしてすべてのサプライチェーン(※1)で最高レベルの環境水準を目指す「模範の促進」の4つである。
この戦略にもとづく具体例は後述していきたいと思うが、いち個人としてはこの「責任ある生き方」という言葉にぐっとくる。胸を打つというよりは刺さる。
厳しい言葉だが、意識ある大人にサステイナブルを改めて意識させるには打ってつけの言葉。これがメッセージというものである。
同年2月には早々に次の手を打つ。地球温暖化阻止、生物多様性の復元、海洋保護に焦点を当てたファッションブランドの同盟組織「ファッション協定(The Fashion Pact)」への参加だ。
ケリンググループ、エルメス、ナイキなど現在250を超えるブランドが参加する、’19年に発足した組織。「ファッション協定」への参加はよりグローバルに、よりパワフルな実行力で「責任ある生き方」を実現していくための選択であったに違いない。
また8月には「ベター・コットン・イニシアティブ(BCI)」に加盟する。コットンの持続可能性を実現するための非営利団体で、水の効率的な利用、土壌の管理、労働指針の研修などを行っており、23カ国200万以上の農家がBCIの認可を取得しているという。
ディーゼルではこのBCIコットンをはじめとしてリサイクルコットン、オーガニックコットンを含め、’25年までに50%以上のコットンを「責任あるコットン」として調達することを目指している。
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