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「今なら切ってもいいかな、と思って」


知名度の上昇とともに、女優としてのオファーも届くことになるが、演技の経験はほぼゼロ。毎日が試行錯誤の連続だったという。
「芝居は学芸会以来でしたし、しかも私は芝居がしたくてこの世界に入ったわけではなかったので、最初は仕事に対して後ろ向きでした。
普通の女の子がいきなりプロに交ざって芝居をするわけですから、そりゃあ大変ですよね(笑)。でも学生時代のチアリーディングで培った負けず嫌いな性格と旺盛な好奇心のおかげで、何とかこれまで続けることができました。
2年前に出演させていただいたドラマ『グランメゾン東京』あたりから、演じることの楽しさみたいなものを感じられるようになった気がします」。
先日、トレードマークである長い髪をバッサリと切って話題になった。中村にとって髪をかきあげる仕草は、デビュー以来キャラクターを象徴する大事なものだった。
「切るときはドキドキしました」と言いつつも、どこか人ごとのよう。
「イメージのせいか、今まではキャリアウーマンや敏腕秘書といった、いわゆる“できる女”の役をいただくことが多かったんです。でもそうじゃない自分も見てほしいと思っていたタイミングで、ドラマ『着飾る恋には理由があって』の話をもらい、これは良い機会だと思って切っちゃいました。
今までやってきた経験が最近ようやく自分の中で自信につながって、今なら切っても大丈夫! って思えたんです。もちろん髪は大事な武器でしたが、もうこれからはいらないかなって」。
女優として新たな気持ちで臨めるようになったことで、また新たな壁が生まれたという。自虐トーンで語るのは彼女のサービス精神の表れだ。
「メディアの方にはよく『健康的な美BODY』などと言われていますが、ぶっちゃけ芝居のときはそんなのいらないじゃないですか(笑)。
知人から言われたことですが、人に光と影があるとするなら私の場合はイメージ的に光の人間、というか光しかなくて、それだと表現の幅としてカラッとしすぎていると。普通の女の子として生きていくぶんには魅力的かもですが、演技を生業にしていく身としては、影の部分を増やさなきゃいけないんです。
これはいろんな人生経験を積まないと表れないと思うので、これから意識していこうと思います」。
後編では出演作『マスカレード・ナイト』について詳しく伺う。
中村アン●1987年、東京都生まれ。9月17日(金)公開の映画『マスカレード・ナイト』に出演。ベストセラー作家、東野圭吾が描く『マスカレードシリーズ(集英社刊)』は、累計発行部数450万部を突破。前作『マスカレード・ホテル』は興行収入46.4億円の大ヒットを記録した。中村さんは物語のキーパーソンのひとり、奥田真由美役を熱演。
松岡一哲=写真 渡嘉敷愛子=ヘアメイク オオサワ系=文


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