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2021.08.01

ライフ

俳優・大沢たかおの役者論「感動は、自分の何かを削らないと生まれない」

8月13日(金)公開の映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に出演している俳優・大沢たかおさんにインタビュー!
作品のことはもちろん、コロナ自粛期間中のFUN-TIMEや幼少期の外遊びの思い出など幅広く語ってもらいました。人間性がグッと垣間見える10問10答も必見です。
 

久しぶりの日本でのOFFは意外にも充実した日々

俳優・大沢たかおさんの役者論「つらく困難な役じゃないと出演する意味がない」
「何十ページ分撮ってるんですか(笑)」。
ゆったりとしたシルエットでモード感がありつつ、どこか静謐さをも備えたヨウジヤマモトの衣装をナチュラルな雰囲気で纏う。この日最後の撮影とあってか、大沢はとてもリラックスしているように見えた。
撮影の最中、フォトグラファーとの何げない会話の中から、お互いに共通の知人がいたことが判明し、意気投合。撮影のセッションも長くなったことで、大沢から冒頭の言葉が漏れた。ふたりの共通点はアメリカだ。
「もともと海外に行くのが好きで、作品がひとつ終わると海外へ出かけていました。最近、大きな作品を終えたばかりなのでどこかへ行きたかったのですが、さすがに今の状況だと無理ですね。
カリフォルニアに滞在している間は、ほぼ毎日のようにサーフィンをしていました。目の前がビーチなので、起きてそのまま海に入るという感じで」。
いつもどおりのFUN-TIMEを過ごせずストレスも溜まっているのかと思いきや、意外とそうでもなさそうな様子。
「日本にいることで、今まであまり会えなかった人に会えたり、ゆっくりと読書をしたり映画を観る時間ができたので、刺激的ではないですが悪くないです。あと昨年の5月から大きな作品に入っていて、最近それがようやく終わってホッとしています。
ただ、役作りのためにカラダを大きくしていたので、今は体重を落とさなければならず食事制限をしている最中なので、好き勝手に外食をするわけにもいかなかったり……、そういった事情もあってほぼ毎日、運動ばかりしています」。
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そして「ちょっと見ていいですか?」と言うと、手元にある雑誌「オーシャンズ」をパラパラとめくりながら「子供の頃はよく外で遊んだなぁ」と白い歯を見せながら幼少期を追想する。
「釣りにはよく行きました。東京出身なので多摩川を筆頭に東京湾、富士五湖……いろんなところに行きました。
東京・赤坂見附に弁慶堀という釣り場があるのですが、友達同士で朝4時半くらいに電車に乗ってよく通っていました。ブルーギルを50匹くらい釣ったこともあります。当時ルアーフィッシングが流行っていたんです。
さらに人気の釣り番組があって、視聴者が魚拓を送ると紹介される企画に取り上げられたくて、競うように釣りに行っていました。二子玉川で80cmの雷魚を釣って魚拓を送ったんだけどな……。
あとキャンプにもよく行きました。山中湖や相模湖へ一泊二日で友達と一緒に行ったり。そうそう当時、釣ったブラックバスをそのまま焼いて食べた友達がいたのですが、食中毒になって救急車で運ばれたことも(苦笑)」。
2/2

今作の出演オファーに即OK、決め手は得体の知れない狸の大妖怪

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8月公開の映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』では、狸の大妖怪・隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)役で出演している。808匹の狸を引き連れながら妖怪バイク“牛鬼”を乗りこなし、自然を破壊して妖怪の居場所を奪った人間を憎んでいる。
今作の出演オファーに対し、大沢はその場で承諾したという。その理由をたずねると、何だそんなことかと言わんばかりに、あの笑顔であっけらかんと答える。
「だって難しそうじゃないですか(笑)。狸の妖怪という役柄ですし一筋縄ではいかないというか。役に対してすぐにイメージができないわけで……。
気持ちとしては『参ったなぁ、これはどうやって演じようかな』っていう。そこから準備を始めて、撮影本番の日には出来上がっていないといけない。もちろん撮影中も壁にぶつかりますから、その都度考えますけど」。
確かに、過去に大沢が主演を務めた作品の役柄は、キャラクターの設定のみならず、セリフの量や体型づくりなどフィジカル的なことも含めて難しいものばかり。
なぜ大変な作品を選ぶのか。「うーん……」と、人差し指と親指で顎に触れながらしばらく熟考し、静かに口を開く。
「ラクをして作った作品は成功した試しがないんです。だから、例えば自分が出演できる作品がいくつかあったとして、その中からどれかひとつを選ぶとき、いちばんイージーで楽しそうなものはまず選びません。
選ぶならいちばん大変そうな、周囲が反対するような作品です。みんなが『それいいね』と言う作品はまずやらない。だって作る前からみんなが喜んでいる時点で、結果も知れているじゃないですか」。

苦難を選択をすることで、仕事が嫌にならないのだろうか。素朴な疑問に対し、まるで狸の大妖怪のような強い眼差しをもって、さもありなんと言わんばかりに大きく首肯する。
「そりゃあ、いつも逃げたいですし、何でこんなに大変なことをしているのかなと思います。でも人に喜んでもらったり感動してもらうことは、自分自身の何かを削らないと生まれないんです。
何かを投げうってまでやり遂げようとしないと、この仕事を全うすることは厳しいと思っています。役に対して真摯に向き合いつつ、常に挑戦し続けていかなければならない。壁を超え続けなければ観る人は飽きてしまいますから」。
意志の強さと大事なものを絶対に死守するという思いは、まさに隠神刑部そのもの。この日のすべての取材を終えて私服に着替えると、大沢は「ありがとうございました」と、和かにあいさつを済ませ、出口へ向かって歩き出す。
少しだけ大きくなった背中を見送る刹那、大沢の後ろには、お腹をポンポン叩きながら練り歩くたくさんの狸の姿が見えた気がした。空目だった。
大沢たかおの10問10答
Q1. 好きな食べ物は?
肉なんですが…… 最近よく食べるのはサーモンの刺し身
Q2. 好きな都道府県は?
東京出身なので、東京。あと京都、福岡も!
Q3. 好きな季節は?
春。
Q4. 最近うれしかったことは?
大きな作品がようやく終わったこと。
Q5. コンビニでつい買ってしまうものは?
ほぼ行かないですが、たまに行くとスイーツを買ってしまう。
Q6. 一日だけ別の職業に就けるなら?
電車の運転士。山手線をぐるぐる回っていたい(笑)。
Q7. 一日が3時間延びたら何をしたい?
もうひとり、誰かに会って話を聞きたい。(今いちばん会いたいのは)母親かな。
Q8. CGとリアルな撮影ではどっちが好き?
場合によってはCG。
Q9. 今までの俳優人生にタイトルをつけるなら?
波乱万丈、乱高下、孤独……。あまりいい言葉が出ないなぁ〜(笑)。
Q10. 健康面で気をつけていることは?
トレーニングを欠かさない!
[Profile]
大沢たかお●東京都出身。1987年より雑誌「MEN’S NON-NO」で、モデルとして活動をスタート。2005年には映画『解夏』で、第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。その後も国民的人気テレビドラマ「JIN-仁-」で主演を務めるなど、現在は日本を代表する俳優となっている。8月13日(金)公開の映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』では、日本妖怪界を支えるリーダーのひとりである、隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)役で出演。
KEIICHI NITTA(ota office)=写真 黒田 領=スタイリング 松本あきお(beautiful ambition)=ヘアメイク オオサワ系=文

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