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「比較対象は、絶対に自分なんです」

スケーターひとりひとりの個人史と、スケートボードカルチャーの総体を絵画として構成したモザイク平面作品「Mosh Pit」を製作中。

最後に、個展のタイトルを「I VERSUS I」と名づけた理由をうかがった。

「(ハードコアパンク・バンドの)ココバットのアルバムから取っていますが、個展のタイトルをどうしようかと考えたとき、作品のタイトルにしていたこともあったので、すぐにこの言葉が浮かびました」。
個展で展示中の作品「I VERSUS I」。そのタイトルは、そのまま個展のタイトルにもなった。
そこに込めた思いはこうだ。

「去年は個人的に数々の苦難に見舞われました。千葉のスケートパークに創る予定だった3メートル大の作品もキャンセルになり、制作費は僕たちの全被りになった。緊急事態宣言で個展はキャンセルで、HUFのLAのお店はBLMの暴動で襲撃されて、彫刻作品も破壊されました。友達のキース・ハフナゲル(HUFの創設者)も病気で死んじゃいました」。

さらに、年末にはスケボーで骨折。とにかくいろんな意味で「心がキツかった」と話すが、「でも、考えてみれば、骨折以外は全部、自分の気持ちで解決する問題ばかりなんですよ」とHAROSHIさん。

コロナ禍の影響もあって、昨年以降、HAROSHIさんは例年では考えられないほど静かな環境で作品創りに没頭した。「今、何を創るべきか」という問題にも、改めて真剣に向き合った。
「Mosh Pit」は、役目を終えたスケートボードの傷ついた美しい姿にフォーカスした作品。個展でも展示されている。
「『良いものは高い』といいますが、『高いものは良い』と勘違いしている人が多いですよね。オークションの値段で、作品の価値を決めるなんて世の中はおかしい。安くて最高のものもあるし、クソみたいなのに高いものもある。

『君の作品はいくらで、誰の作品はいくらだった』とかいちいち報告してくる人もいますが、くだらないなと思ってます。誰かと比較して、お金がまるで戦闘力かのように語られるなんて、馬鹿げている。自分に向き合うべきは自分だけ。比較対象は、絶対に自分自身なんです。そんな意味も込めて、『I VERSUS I』と名付けました」。

’90年代のストリートから出発したアーティスト、HAROSHI。彼が「自分との戦い」と位置づけた個展は今、自身が青春を過ごした原宿の地で開催中。

葛飾区の工房からアートとして生まれ変わったスケボー作品は、初見でもどこか懐かしさと親しみやすさを感じ、きっと深いところで共感できるはずだ。
 
[イベント詳細]
HAROSHI「I VERSUS I」 
場所:ナンヅカ アンダーグラウンド

住所:東京都渋谷区神宮前3丁目 30-10
電話:03-5422-3877
営業:11:00〜19:00(月曜休業)
期間:〜8月8日(日)まで
※502ページに及ぶ作品集はコチラから。

清水健吾=写真

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