「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……我が家ではイサム・ノグチのAKARIを型違いで5つ使っています。写真のスタンドタイプは階段下のスペースに。抜けがある場所なので、2階まで三角形の光が延びていい感じです。
AKARIは“光の彫刻”と呼ばれ、温かみのある光が特徴的。畳んで収納できるのも便利で、もう10年以上使っていますね。
海外のインテリア雑誌でもよく見かけますが、最も印象的なのは、1950年代にパリのサンジェルマン・デ・プレにあった伝説の「ステフ・シモンギャラリー」の写真。
AKARIは、シャルロット・ペリアンやジャン・プルーヴェなどの作品と絶妙に調和するインテリアなのです。アメリカやヨーロッパで人気がある理由もうなずけます。
AKARIは’52年、伝統的な岐阜提灯との出会いから生まれ、今も岐阜県で作られているのですが、なぜか海外のデザインに見えるから不思議。ジョージ・ナカシマと通じるものがあります。ペリアンも含め、皆同世代で同じ頃に日本と海外を行き来していたのもなんだか感慨深い。
そしてAKARIは岐阜県で、ジョージ・ナカシマの作品は香川県で作り続けられていますが、どちらもだんだん職人さんが減ってきているというところも同じ。
ずっと作り続けるというのはなかなか難しいことだし、海外での需要が高く国内で買いにくくなっているという状況もあり、伝統ある技術を次世代がどう受け継いでいくか注目すべき点だと思います。
「イサム・ノグチ」のAKARIスタンドタイプは小型のテーブルランプから大型のフロアランプまで、ペンダントタイプは球形から細長い形まで、大きさも各種あり。写真は三角形を組み合わせたシルエットと三角形の光が特徴的。シェードはすべて職人の手作業。
照明は価格が高いというイメージですが、AKARIはちょっといいスニーカー程度で買えるので、職人をサポートするという意味でもまずは買ってみることをおすすめします。そのときはぜひ日本橋人形町にあるショールームに足を運んで、自分の目で確かめてほしいです。
実際の大きさや光の広がり方を見たり、スタッフによるイサム・ノグチとAKARIのエピソードを聞くのもとてもためになります。先日訪れたときも、現在東京都美術館で開催されている「イサム・ノグチ 発見の道」展(8月29日まで)がすごく面白いと教えてくれたしね。
いいモノの魅力は、そうやって人づてに伝わっていくんだなと思います。
[藤井隆行 プロフィール]
東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。東京都美術館に行ったついでに10年ぶりくらいに上野を散策。アメ横は当時のままで、時計や靴など発見があり、また通ってしまいそう。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
上に戻る 竹内一将(Ye)=写真 町田あゆみ=文