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ハワイの文化に泥を塗るようなことはしたくない

そこから5年の歳月を経て、夫妻はハワイに蒸留所をオープンさせた。ハレイワのでこぼこ道の先に、ささやかな蒸留所を構えたのだ。そして「ハワイアン焼酎カンパニー」として扱う手造り焼酎の第一号を完成させた。
しかし、初回出荷分の焼酎造りは当初の思惑どおりに進まなかった。
「タロイモを使って焼酎を造ってもいいか、許可をもらうためにハワイの団体を複数訪れ、相談しました」と平田さんは振り返る。「残念ながら、タロイモを使ったアルコール飲料の製造は認められませんでした。ただ、私たちはハワイの文化に泥を塗るようなことは一切したくなかったのです」。
そこで、焼酎造りに適した、でんぷんが豊富で粉質な果肉のハワイ産オキナワン・スイートポテト(紫芋)を選んだ。
現在(2016年春)の出荷分の焼酎は、「スリーアイランズ」と名付けられた。その名は、ビッグアイランド(ハワイ島)、オアフ島、モロカイ島という3つの島の芋をブレンドしたことにちなむ。
ウォッカのように澄んでいるが、キレがよく、なめらかで、後味はほのかに甘い。アルコール度数は約30%で、日本酒とウイスキーの中間に位置する。
日本といえば、日本酒を思い浮かべる人は多い。だが、日本では実際のところ、発酵のみの醸造酒である日本酒とは異なり、焼酎のように米や麦、それにサツマイモを発酵させ、蒸留させた蒸留酒のほうが人気だ。
とはいえ、日本で造られる焼酎の多くはステンレスのタンクで量産されており、発酵は、空調の効いた室内でコンピューターの監視システムによって管理されている。平田さんが万膳さんのもとで修業をしたいと思ったのは、「自然をコントロールしようとするのではなく、自然と一緒に仕事をしようとする」姿勢に魅力を感じたからだ。
彼は、師と同じ理念と技術を守っている。ハワイでの生産サイクルは2カ月間で、夫妻は焼酎造りの全工程に気を配る。
夜は麹部屋の上にある木でできた台で眠り、3~4時間ごとに起きて麹の様子を確認する。培養された麹菌は、焼酎造りの最初の工程で、でんぷんを糖分に変える働きがある。蒸した米に麹菌を混ぜて米麹を造っていくのだ。
次に、米麹につぶしたオキナワン・スイートポテトを加え、万膳酒造から譲り受けた100年ものの甕壺で発酵させる。発酵の工程では温度と湿度を管理し、その後はもろみを木桶蒸留器に入れて蒸留させ、最大で6カ月間熟成させる。

生産量は半年ごとに3000本だけなので、平田さんは自分の仕事場を「ごく小さな蒸留所」だと見なしている。夫妻で焼酎造りから蔵での販売まですべてをこなし、ここで働き、眠り、食事をし、そして暮らしている。
夜中に起きて麹の状態を確認するのはもちろん、朝5時から夕方5時まで、米を洗って蒸し、サツマイモを切ってすりつぶし、蒸留するという作業を休みなく続ける。
平田さんいわく「あとは、掃除に大半の時間を費やしています」とのことだ。「消毒と掃除の管理人みたいですね。雑菌の混入は、最悪の事態を起こしかねませんから」。
焼酎造りに見られる細かい部分については、「ちょっとしたことなんですよ」と語る。ただ、ちょっとしたことはいずれも重要なことだ。もはや焼酎造りは冗談ではなく、平田さんの人生である。
焼酎造りのどの工程についても「最終的に、自分の人生を豊かにしてくれるような気がします」と語っている。
ハワイアン焼酎カンパニーの詳細については、Facebookをチェックしてみよう。
 
ジョン・フック=写真 マーサ・チェン=文 神原里枝=翻訳
This article is provided by “FLUX”. Click here for the original article.


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