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ネガティブをしっかり受け止めて、ポジティブに変える


「原点回帰」を深堀りする前に、山田さんの人生の流儀のようなものに触れておきたい。
この日は農家の顔を見せた山田さんだが、誰もが知る俳優業はもちろん、プロデューサーになったり、歌手になったり、本を書いたり、さまざまなジャンルへ次々と踏み出し、しかも活き活きとチャレンジしている様子は、傍から見ていると自由気ままで掴みどころがない。
しかし話を聞くうちに、点と点がつながって線になるような、山田さんの行動原理の核心部が見えてきた。

「俳優の仕事って、『今日から来なくていいよ』と言われたら、それで終わりなんですよ。退職金もないし、保険もないし、保障もない。つまり、あってないような職業なんです。一般社会では通用しない契約の中で僕らは仕事をしていて、そういう体制についてたくさんの人が文句を言っている。僕もずっと言い続けてきました。
だけど、その体制はこれからもずっと続くことがわかった。じゃあ僕は俳優を辞めるのかと聞かれたら、多分、辞めない。僕はこの仕事に魅力を感じているから。だったら、そうなのであれば、ネガティブもしっかり受け止めて、どうポジティブに変えるかという考え方に切り替えたんです」。

2019年に公開された映画『デイアンドナイト』で、山田さんは初めてプロデューサーとして裏方に徹した。資金調達や脚本会議への参加、ロケ地の交渉やキャスティングすべてに関わり、かねてから文句を言っていた“体制”側に自らが回ってみたのだ。
「制作側にも制作の考えがあり、意見があるはず。だったら、自分がそっち側に立ってみて、プロデューサーの苦労を味わってみようと思ったんです。やってみたら、まぁ辛かったですね(笑)。プロデューサーの苦労が身に沁みてわかりました。でも、だからと言って、プロデューサーが俳優の辛さを知らなくていいわけでもない。
僕がプロデューサーのときは俳優の気持ちが汲めるし、俳優の気持ちをスタッフに伝えることもできる。その現場が良かったって感じてくれる俳優がいたら、次の現場では、自ら何かアクションを起こしてくれるかもしれないですよね。
自分ひとりじゃ無理だけど、みんなが自分で動いていけば環境は良くなるはず。そう思って僕はやっています」。
〈後編に続く〉
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佐藤ゆたか=写真 ぎぎまき=取材・文


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