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「責任は俺が取る」の一言が足りない

さらに、そのように現場に権限移譲して自由に動いてもらいたいのであれば、言わなければならない言葉があります。それが「責任は俺が取る」です。
かの大宰相田中角栄が大蔵大臣(現在の財務大臣)に就任した際に、官僚たちに言ったという言葉もこれです。
彼は「君たちは天下の秀才、思うことがあれば何でも言いに来い。できることはやる。できないことはやらない。しかし、すべての責任はこの田中角栄が背負う。以上!」(筆者要約)と言われた当時の大蔵官僚たちは心酔したそうです。
この「責任は俺が取る」がなければ、いくら自由にさせて権限移譲したつもりでも、メンバーは「責任放棄」と捉えるだけです。
 

今の日本はむしろ「俺の言うことを聞け」が必要では

さて、ここからは素人の私見ですが、私は今の日本はそもそもVUCAというより、落ちるところまで落ちてしまっているために、そこからやるべきことははっきりしている時代ではないかと思っています。
VUCAとは以前の日本のように世界のトップに近づいてしまい、何をすべきかわからないときに言うことでしょう。負けている国や会社だらけ、言い換えれば見本となる国や会社だらけということです。
やるべきことはわかっているのです。ですから、VUCAとか聞いてしまうと「どこがやねん」とどうしても思ってしまいます。
今の日本に必要なのは、むしろNikeのスローガンで有名な“Just Do It.”ではないでしょうか。
連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ
「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
 
石井あかね=イラスト


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